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FXコラム

2019.04.01

米国の長短金利逆転をどうみるか?

著者:古金 義洋


●リセッション前にはいつも長短金利逆転現象があるが、
長短金利逆転は必ずしもリセッション突入につながらない

米国で長短金利がほぼ同水準になり、リセッションの懸念が高まって株価が急落した。
昨年5月にも、この場で長短金利差縮小について述べたことがある。
当時はまだ、長短金利差は1%強で、
「この程度の長短金利差は景気後退を心配させる水準ではない」と述べた。

ちなみに、ここでの「長短金利差」は、メディアでしばしば取り上げられる
「10年国債利回りマイナス3年国債利回り」ではなく、
「10年国債利回りマイナスFF金利目標値」のデータでみている。
理由は、「10年国債利回りマイナスFF金利」の方が、
後述する株価上昇率との相関関係が強いためである。

昨年5月に比べ長短金利差はより縮小し、長短金利はほぼ同水準になったが、
現状でも景気後退の懸念はないのか。

長短金利差は株価や失業保険申請件数などとともに、
コンファレンスボードが作成する米国の景気先行指数の
コンポーネント10指標のうちの1つで、景気の代表的な先行指標だ。
米国のリセッション(景気後退)は金融引き締めによって起こるケースがほとんどだ。

FRBは景気過熱やインフレに対応して金融引き締めを行うが、
金融引き締めは短期金利を大きく押し上げる。
その際、長期金利も上昇するが、金融引き締めがインフレ期待を抑制するため、
長期金利は短期金利ほど上昇せず、長短金利差は縮小する。

引き締めが強まれば強まるほど短期金利は上昇し、一方で、
長期金利はインフレ期待の低下と先行きの景気悪化懸念で上昇がストップし、長短金利は逆転する。

図1でみる通り、米10年国債利回りの数値が入手できる、
1962年以降のリセッション局面7回(図1のシャドー部分)の前には
必ず長短金利の逆転現象がみられた。

長短金利逆転がリセッションにつながった7回のケースをみると、
長短金利逆転時とリセッション突入時の時差は、
短い場合で5か月(1969年時)、長い場合は18か月(前回リーマン危機時)と
かなり開きがあった(表1)。

過去7回のケースにおける長短金利逆転とリセッション入りの時期の時差は平均12か月だった。
だが、リセッション入りの前にはいつも長短金利逆転現象があったが、
その逆は真ではなく、長短金利逆転が必ずリセッションにつながるわけではない。

同じ1962年以降の月末データで、長短金利がわずかでも逆転したケースは計12回あった。
つまり、長短金利が一時的に逆転してもすぐにリセッションにならず、
再び元通りになってしばらく景気拡大が続いたケースが5回あった。
1966年9月、1968年12月、1986年2月、1995年11月、1998年6月のケースだ。

長短金利逆転がすぐにリセッションにつながらなかった、
いわゆる「騙し」のケース5回を含め、
計12回の長短金利逆転からリセッション入りまでのすべてのケースを平均すると、
長短金利逆転時とリセッション突入時の時差は平均24か月だった。

長短金利が逆転したことは、リセッション入りの可能性を高める材料と言えるが、決定的な材料ではない。

●長短金利差逆転でもなお株高が続く可能性

今回、長短金利逆転が株価急落の一因になった。
長短金利差は株式投資の指標ともされ、長短金利差が拡大している時期は
株式投資のパフォーマンスが良いとされる。

実際どうなのか。

1980年代前半までは長短金利差が大きく変動しており、安定性に欠けるものの、
1985年以降の長短金利差と株価上昇率(S&P500種株価指数の1年間の上昇・下落率)の
関係をみてみると、
長短金利差との関係で最も株式投資のパフォーマンスが良かったのは、
10か月前の長短金利差をみて株式投資を行う方法だ。

最小二乗法を用いて、長短金利差と株式投資収益率の関係を計算すると、
株式投資収益率(%)=2.53+4.54×(10か月前の長短金利差)
という関係がある。

今(19年3月)から10か月前の18年5月の長短金利差は1.1%で、
これを根拠に今S&P500種株価指数を買うと、
今後1年間の株式の期待投資収益率は7.5%となる。
一時的な長短金利逆転では株価下落は続きにくく、
逆転がある程度長期にわたって続かなければ、
株価が傾向的に下落するとは言いにくいということになる。

では、仮に、今回の長短金利逆転が「騙し」ではなく、
リセッションにつながるとした場合でも、株価の動きについて強気でみても良いのか。

長短金利逆転がリセッションにつながった過去7回のケースの株価の動きをみてみよう。
長短金利が逆転した2000年5月、2006年6月など過去7回のケースで、
長短金利逆転時の株価(S&P500株価指数)を100とした株価の動きをみると、
それぞれ動きはまちまちだ。

長短金利逆転後の株価の動きをみると、大きく分けて7回のうち
4回が株高、2回が株安、1回が横ばいだった。

平均的なパターンをみると以下の通りとなる(図2参照)。
① 長短金利逆転のあと1か月後は株価が下落する。
② 1か月間の下落後、株価は反発し、5か月間、株価は上昇する。
③ その後(長短金利逆転から半年後)、株価はピークをうち、
1年2か月間(長短金利逆転から1年8か月後まで)、株価下落が続く。

こうした過去のケースからみると、長短金利が逆転したばかりの現段階では、
株価の方向性はなお上向きになる可能性が高いと言える。

●長短金利差逆転でもなお株高が続く可能性

今回の長短金利逆転は、景気悪化懸念というより、どちらかと言えば、
FEDとマーケットとの「対話」の問題によって起こった。

すなわち、以下のようなことで、FEDはマーケットの景気悪化懸念に火をつけてしまった。
昨年末まで、漸進的な利上げ、自動操縦でのバランスシート縮小の姿勢を維持していたFEDは、
1月のFOMCでハト派姿勢に急転換した。
利上げを休止し、バランスシート縮小をも止めることとした。

バランスシート縮小見直しは、
本来、民間金融機関側の準備金需要が想定されていた以上に強いという
技術的な要因によるものだったが、
マーケットは株式下落に対応してFEDが「量的引き締めの休止」に踏み切り、
追加の「量的金融緩和」を行う用意があるとも考えた。

パウエル議長も、マーケットにそうした誤解があることを知りながら、
株価下落を避けたいために、そうした誤解を放置した。

3月のFOMCでは、今年末のメンバーの金利見通し(中央値)が
2.375%(前回12月時点の見通しは2.875%)と大幅に下方修正され、
年内利上げがないとの見通しになった。

政策スタンス変更の理由としては、中国や欧州などの海外景気減速のほか、
BREXIT、貿易協議、政府機関閉鎖などが挙げられていた。

しかし、マーケットは余りに急激な政策スタンスの変わりようをみて、
米国経済にリーマンショック時のサブプライムローン問題などのような、
FEDにしか知りえない大きな問題があるのではないかと考え始め、かえって不安になりだした。

そして起こったのが、今回の長短金利逆転とそれに伴う株価急落だったと考えられる。

こうした「対話」の問題により、しばらくは市場の動揺が続くおそれがある。
ただ、あくまでも一時的な動揺だろう。

今はまだ米国経済は成長テンポこそ減速しているが、拡大基調を維持しており、
企業収益も増加傾向を辿っている。

今後も米国経済の減速は続き、大きな方向として、
米国株価も上向きから下向きに転じ始めゆとしている局面と考えられるが、
その転機がちょうど長短金利差が逆転した今であるかどうかの見極めはつきにくい。

この先米国景気が悪化しても、今は利下げにより景気を支えることが可能な状況であるため、
それで株価は上向きの方向を維持することも可能だ。
株価はしばらくは高値圏でのもみ合いを続けるのではないかと思われる。

以上

 

 

古金 義洋

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