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FXコラム

2019.05.07

反グローバル化で世界の企業は儲けにくくなる

著者:古金 義洋


●グローバル化の流れはどのように進展し、どのように退潮していったのか?

平成は経済のグローバル化が大きく進展し、その後、
急ブレーキがかかった時代だったように思われる。

1989年、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊し、
東西ドイツが統合、ソ連が消滅し、東欧諸国が市場経済側の陣営に入った。

1978年から鄧小平の指導のもとで改革開放政策が実施され、
計画経済から市場経済へと切り替えていた中国も加わり、
世界はヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に行き来できる
グローバル化の時代を迎えることとなった。

アダムスミスの「見えざる手」は、政府が介入せず市場に任せて、
自由にやらせておけば、結果的に、資源が最適に配分され
経済が豊かになっていくという考え方だ。

規制のある世界に比べ、自由な取引ができる世界は、
とりわけ、国境を越えて活動できる企業にとってメリットが大きい。

以下では、1990年代以降、国境を越えたヒト、モノ、カネの動きが
どうなっていったかを振り返ってみよう。

国境を越えたヒト、モノ、カネの自由な動きのうち、
モノに相当する貿易の自由化について言えば、貿易自由化は、
基本的に、比較優位の原則に基づき、先進国、発展途上国の区別なく、
世界全体の所得を増やす効果がある。

「比較優位の原則」というのは、すべての国には、それぞれ相対的に優位な産業があり、
自由な貿易によって利益を受けることができるというもので、
国際分業によって世界全体の生産を拡大させる。

また、自由貿易は、要素価格均等化理論に従って、
各国の価格と賃金を平準化させる効果がある。

「それぞれの国で作られる製品が比較優位を持つかどうかは、
それぞれの国が労働力と資本などの生産要素をどの程度多く持っているかによる」
とするのが「ヘクシャー・オリーンの定理」だ。

資本に比べ労働力を豊富に持つ国では、賃金が安いため、
労働集約型の産業が比較優位を持ち、逆に、資本を豊富に持つ国では、
資本コストが安いため、資本集約型の産業が比較優位を持つ。

労働が豊富な途上国では労働集約型産業が成長し、
労働力への需要が高まるため、当初は安かった賃金が上昇していく。

これに対して、先進国では資本集約型産業が発展する一方、
労働集約型産業が廃れ、労働力への需要が減少するため、
高かった賃金が低下する。

こうして「生産技術の同じ国が、比較優位に基づく貿易を行っていくと、
労働力や土地など、本来国境を越えて活発に移動しない生産要素でも、
その価格である賃金や地価などが国際的に均等化していく」という結論になる。

実際に、貿易自由化で世界の貿易量と経済はどうなったのか。

世界の貿易量は1985年頃までは年率3%程度で、
GDP成長率とほぼ同水準の緩やかな増加だったが、
その後は成長率を大幅に上回る増加をみせるようになった(図1参照)。

自由貿易協定などにより貿易コストが低下し、またその一方で、
IT革命による国際通信網の発達で、生産工程が国際化し、
グローバルサプライチェーンができたことも貿易量の押し上げにつながったとみられる。

そして、貿易自由化の理論が示す通り、貿易量の増加率が加速するとともに、
GDP成長率も次第に加速していった。

2007年までの5年間の貿易量の増加率は約8.5%に、
同GDP成長率の増加率は5.1%に加速した。

しかし、転機になったのが2008年のリーマンショックだった。

リーマンショックは自由放任的な金融システムのなかで、
金融機関が過度のリスクテイクを行ったことによって起こったとも言われ、
これを機に自由放任主義に対する見直しの動きが強まった。

リーマンショック以降、世界経済の成長率は減速に向かい、
成長率は3%台に鈍化した。

成長率の減速に伴い、貿易量の伸びも急速に鈍化し、
貿易量と成長率の伸びはほぼ同水準になった。

リーマンショックはその後の世界経済の成長率を減速させると同時に、
行き過ぎた自由放任主義を見直させる事件であったと考えられ、
その結果、貿易も停滞していった。

次に、国境を越えたカネの移動はどうか。

ここで注目しているのは、貿易を代替する効果があり、
先進国から途上国への技術移転を通して世界経済を拡大させる効果が
期待できる海外直接投資の動きだ。

企業が海外の市場に製品を供給しようとする場合、
貿易(輸出)によって供給する場合のほか、
相手先の国で当該製品を現地生産して供給することもできる。

このため、海外直接投資は輸出を代替する効果がある。

貿易摩擦などでモノの移動に制限がかかっても、
海外直接投資による海外現地生産という形で、
企業は海外市場に製品を供給することができる。

また、直接投資は、資本取引のなかでも、
単なるおカネの移動ではなく、技術や生産ノウハウなどを含む資
金の移動であるため、それが投資相手先の成長を大きく高める効果がある。

資金が先進国から途上国に流れていけば、先進国において
標準化した技術を途上国は比較的低いコストで取り入れ、
模倣でき、成長に利用できる。

それは、発展途上国の経済成長を加速させる効果がある。

先進国における技術進歩が止まらない限り、
先進国から途上国への直接投資の増加が途上国の経済成長を高め、
それは、また先進国から途上国への輸出増加などを通じて
先進国の経済成長も高めることになるため、自由貿易同様、
世界全体に恩恵をもたらすと考えられる。

実際はどうだったか。

世界の直接投資は1980年代後半までGDPの1%以下にとどまっていたが、
1990年代以降、同比率は大きく上昇し、
ピーク時の2007年には5.5%に上昇した(図2参照)。

しかし、直接投資についても、モノの移動(貿易)と同様、
やはりリーマンショックを契機に減少に転じた。

その後の同比率は急低下し、2010年代は2~3%の範囲内で推移している。

リーマンショックはモノの移動だけでなく、
カネの移動についてもブレーキをかけたということになる。

さらに言えば、リーマンショック以前の2007年までの
直接投資の急増は世界の成長率を高める効果があったが、
その後の直接投資の減少は逆に世界経済を減速させたとみることもできる。

最後に、ヒトの移動はどうか。

ヒトの移動もやはりモノやカネの移動を代替する効果がある。

先進国からみると、途上国で生産される労働集約的な最終製品を輸入する代わりに、
その製品を先進国国内で作ってくれる労働者を途上国から
移民として受け入れることができる。

労働力が過剰気味の発展途上国から人手不足に陥りやすい
先進国に労働力が移動すれば、やはり世界経済にとって
プラスに作用すると考えられる。

移民の動きをみると、増加率としては直近の数値が把握できる
2016年時点でほぼゼロ程度に鈍化しているが、
絶対数としてはなお右上がりの増加傾向を続けている(図3参照)。

貿易量あるいは直接投資の動きと同様に、
移民の数はリーマンショック前の2007年にいったんピークを打った。

しかし、2010年代に入ってから、ヒトの移動は再び増加していった。

これがモノやカネの動きとヒトの動きが幾分異なる点だ。

2010年代に入ってからの移民増加は、
中東・北アフリカ地域で本格化した民主化運動、
いわゆる「アラブの春」以降、大量の難民・移民が
主に地中海を経由して欧州に流入したことが原因だ。

ヒトの移動が及ぼす影響についてはどうみるべきか。

ヒトの移動も、やはり世界全体の経済を大きく押し上げる効果を持つ。

とくに、ヒトの移動によって、先進国と途上国の労働者の賃金格差は
縮小すると考えられるため、途上国からの労働力流入で割高な賃金が低下し、
労働者の安い賃金を利用できるメリットを享受できる立場にある
先進国の企業収益は大幅に拡大すると考えられる。

●グローバル化の副作用とは?

このように国境を越えた自由なヒト、モノ、カネの移動は
世界の経済成長を高める役割を果たすと考えられる。

しかし、実際にヒト、モノ、カネが国境を越えて取引されるようになり、
世界経済のグローバル化が進展すると、想定外の取引も増え、
グローバル化の副作用が目立つようになったというのも事実だ。

要素価格均等化理論によれば、自由貿易が進展すれば
先進国と途上国の経済格差は縮小していくはずだった。

確かに、途上国のなかで中国など一部の国の経済成長が加速したが、
世界全体としてみれば、期待したほどの格差縮小はみられない。

多くの国では、逆に国内の経済格差が大幅に拡大した。

また、要素価格均等化により、労働力の豊富な発展途上国の賃金が上昇し、
資本の豊富な先進国の賃金が低下するはずだった。

しかし、実際には発展途上国、先進国の双方で賃金が低迷し、
労働分配率低下が起こった。

カネの流れについてはどうだったか。

資本と技術については、途上国では労働に比較して希少な生産要素であり、
資本や技術の流入による限界的な生産性の上昇が先進国よりも大きいため、
先進国から途上国に流れていくことが期待されていた。

19世紀のパクス・ブリタニカの時期はこの理論通りに英国から
海外に資本と技術が動いていた。

しかし、今回は、カネの流れはむしろ途上国から先進国に向かうことも多く、
特に、大幅な経常赤字を抱える米国に集中した。

これは「ルーカス・パラドックス」と呼ばれる現象で、
途上国の裕福な人々が自分のお金と生命を心配して先進国に投資したことが主因と言われる。

先進国から途上国への資本と技術の流れを阻害する要因もあった。

標準化した技術とはいえ、技術は誰でもタダで利用できるわけではない。

確かに、途上国が技術をタダで模倣できれば、
技術を自分で開発した先進国より優位に立てるが、
実際には、ライセンス料を支払わなければならない。

ヒトの流れについてはどうだったか。

先進国の労働者は、グローバル化に対して反旗をひるがえした。

1990年代後半以降のIT革命により、
ホワイトカラー労働者がコンピューターによって置き換えられるようになった。

2008年のリーマンショック以後の景気回復下における
雇用回復が遅々としたものだったこともあり、
先進国の労働者の怒りは反グローバル化を煽るポピュリズム政治を助長した。

多くの実証分析によれば、発展途上国、先進国の双方で
賃金低迷の主因はグローバル化というより、どちらかと言えば、
IT革命だったとされる。

しかし、結果的にこうした先進国労働者の反グローバル化の動きが、
各国の国内政治、政策にも反映するようになった。

2016年には英国が国民投票でEU離脱を決め、
17年には米国で自国第一主義を標榜し、
保護主義的な政策を厭わないトランプ政権が誕生した。

2010年代以降の大量の難民・移民の欧州流入に対し、
欧州では難民・移民の排斥を主張するポピュリズム政党が台頭し始めている。

米トランプ政権は保護主義的な政策を強め、
移民流入制限のための「壁」を建設しようとしている。

また、米国など先進国は、中国への技術流出を嫌って、
カネの流れにも制限を加え始めた。

結局、先進国の労働者がこれほどグローバル化に反感を持つようになったのは、
①先進国国内の労働市場の流動性が確保させていなかったこと、
②グローバル化によって大きな恩恵を受けた企業から労働者への所得移転が限定されていたこと、
などが問題だったと考えられる。

自由貿易によって国際的なモノの取引が活発化すれば
世界全体としての生産は高まるが、
一国経済のなかだけを考えると輸入によって代替される産業の衰退につながり、
間接的に当該産業に従事する労働者は賃金低下や
一時的な失職に見舞われるおそれがある。

さらに、ヒトの移動の活発化の影響はより直接的であり、
当該産業に従事する労働者の賃金低下や失職のリスクは高まる。

途上国からの低賃金労働力の流入と国内労働力の賃金低下によって
企業収益が大幅に増加するが、それによって増加した企業収益が
労働者に還元されない限り、先進国国内で労働分配率が低下することは避けられず、
先進国の労働者が政治的に反旗をひるがえす無理はない。

平成のグローバル化の進展と退潮を振り返ると、
2007年頃まで増加傾向を辿っていたモノやカネの動きは
リーマンショックを契機に反転し、減少に向かった。

リーマンショック後の世界経済停滞がモノやカネの動きも停滞させたとも言えるが、
歪んだ形でのモノやカネの動きそのものに限界があったとみることもできなくない。

一方、IT革命の影響やリーマンショック後の雇用低迷もあって、
欧米など先進国の労働者がグローバル化への反発を強め、
国内政治面から欧米先進国の対外政策は自国優先的
あるいは排外的に向かいやすくなっている。

多くの先進国の労働者層が選挙を通じて
政治的にグローバル化政策に歯止めをかけようとしている以上、
よほどのことがない限り、世界経済が再びグローバル化の潮流に乗ることは考えにくくなっている。

グローバル化の退潮は大きな流れとして、企業の自由な活動が阻害され、
儲けにくい環境になってきていることを示すことは言うまでもない。

企業の収益環境悪化は株価の低迷につながるだろう。

●周回遅れの日本は外国人労働者の大量流入で混乱も

世界でグローバル化への反発の動きが強まるなか、
日本では4月1日に外国人労働者の受け入れを拡大する新たな制度が始まった。

これまで「高度な専門人材」に限定されていた就労目的の在留資格を、
事実上の単純労働者にも認めるという大きな政策転換だ。

人手不足に直面する産業界からの要望に応える制度であり、
外国人労働者の受け入れ拡大に伴って、
国内労働集約型企業の収益増加が見込まれる。

新制度については、日本で生活することになる
外国人の支援などの体制が不十分などといった見方がなされているが、
事実上の移民増加が国内の社会・経済情勢に及ぼす影響は未知数だ。

移民は現行の賃金では国内労働者があまりやりたがらない仕事をしてくれると期待されている。

国内労働者と移民が労働市場で同じ種類の労働力(代替財)として競合するとすれば、
国内労働者の賃金は低下すると見込まれる。

そうではなく、海外からの労働力流入を契機に、もともと身に着けている高い技術を背景に、
国内労働者がより質(賃金)の高い仕事に従事することができるようになるとすれば、
国内労働者と海外から流入する労働者は補完財として位置づけられ、
国内労働者の賃金がむしろ上昇することが期待できる。

もともと高い技術を身に着けている国内労働者の賃金は上昇し、
そうでない労働者の賃金が低下すると見込まれるため、
高い技術を身につけているかどうかで、国内労働者の賃金格差が拡大するだろう。

現在の日本の状況を考慮した場合、賃金は上がるのか、それとも下がるのか。

現在の日本の産業構造をみると、モノづくりの国という評価とは裏腹に、
製造業に従事する労働者の比率は15%程度に低下しており、サービス化が進んでいる。

サービス業のなかでも、とりわけ、増えているのは介護や宿泊・飲食などで、
いずれも労働生産性が低く、賃金水準も低い労働集約型の産業だ。

労働人口減少が見込まれるなかで、本来なら技術集約あるいは
資本集約型の産業構造にしていくことが理想であろうが、高齢化の流れに加えて、
観光立国を目指そうとする政府の姿勢により、
現実の産業構造は労働集約型に変わってしまっている。

人手不足が深刻化しているのは、もともと人口が減っているのに
産業構造が労働集約型になっているからであり、また、
人手不足のなかで賃金が低迷しているのも生産性の低い産業の構成が
高まっていることが原因にほかならない。

そうした現在の状況から考えると、海外から流入する労働者は
国内労働者と競合するする可能性が高く、
国内労働者の賃金は大幅に低下する可能性がある。

OECDなどの移民の影響に関する実証研究によれば、
労働市場に及ぼす影響、財政に及ぼす影響など、
国レベルでみるとほとんど影響が見いだせないとされる。

しかし、地域に絞ってみると、影響がないわけではない。

移民流入の影響は直線的なものではなく、
特定地域に大規模な移民の流入があると、
地域の労働市場にかなりの影響が生じると指摘した事例研究もある。

移民は受入国出身者よりも公共交通機関を利用することが多いため、
移民の大量流入は地域の交通インフラを圧迫する可能性があることなども指摘されている。

周回遅れで移民の流入に踏み切った日本だが、日本の経済・社会を混乱させる可能性がある。

以上

 

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古金 義洋

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