元チーフディーラー集団(柾木 利彦、西原 宏一、伊藤 寿彦、竹内 のりひろ)+各分野一流の執筆陣の相場記事

メディア

無料講座・メルマガ

おすすめ商品

おすすめ会社

FXプライムbyGMO

スパンモデル標準搭載

FXコラム

2019.06.10

行き過ぎた金利先安期待にFOMCはどう対応するか?

著者:古金 義洋


●米景気指標は利下げを必要とするほど悪くない

5月分の弱い雇用統計を受けて、
6月7日時点のFF金利先物市場では8月限FF先物金利が2.155%(現在の2.375%に比べ
0.22%ポイント低下)、12月限金利が1.755%(同0.62%ポイント低下)にまで低下した。

7月の利下げを9割程度織り込み、年末までに累計2~3回の利下げを織り込んだ数字だ。

利下げ観測がこれほど急速に高まるきっかけは、5月初めの米中貿易協議の事実上の破綻、
5月30日にトランプ政権が発表した対メキシコ関税引き上げが、
米国を含む世界の株式市場を下落させ、世界経済悪化懸念を高めたことだった。

このうち米中摩擦に関して言えば、短期的に鎮まることは考えにくく、
6月末の米中首脳会談次第では一段の摩擦激化も予想される。

一方、対メキシコ関税問題については、すでに一段落し、
トランプ大統領の一人芝居だったのではないかとの見方もある。

米国株(S&P500株価指数)は5月初めの高値から6月3日にかけて6.9%下落したが、
下落幅のうち先週末現在で64%戻した状態で、利下げ観測についてもかなり後退していい

では、このところの景気指標からみると、利下げが必要なほど、景気は悪化しているのか。

5月の非農業雇用者数の増加幅は7.5万人と前月(22.4万人)から大幅に縮小した。

しかしながら、もそも雇用統計の月ベースの数字は振れが大きいため、
ある程度均した数字でみなければならない。

2018年1月~19年3月の月平均雇用者数増加幅は21万人(増加率でみると年率1.7%)で、
これに対して、最近3か月(19年3月~5月)の平均増加幅は15万人(同年率1.2%)に
縮小しているため、雇用増加のペースは確かに鈍化していると言える。

ただ、増加率でみると年率1.7%だった雇用増加率が、同1.2%に減速したにすぎず、
最近1年間の労働力人口増加率(0.6%)を上回る。

労働生産性上昇率が変わらなければ、GDP成長率も0.5%ポイント低下する計算になる。

昨年10~12月の成長率が前年比3.0%、今年1~3月が同3.2%だったが、
これが2.5~2.7%に減速することになるだけのことで、大幅な景気悪化を
意味するものではない。

また、今後も労働力人口が年率0.6%しか増加しないとすれば、
雇用者数が同1.2%増加した場合、労働需給は逼迫(失業率は低下)し続け、
賃金上昇圧力は徐々に高まっていくはずだ。

最近の雇用者数の伸びの鈍化は、どちらかと言えば、
景気悪化懸念により雇用する側の姿勢が悪化したというより、
雇用させる労働者がいなくなってきたこと、
つまり労働供給側に原因があるとみた方が良いのではないか。

もし、貿易摩擦激化懸念などの理由により、
雇用する側の姿勢が悪化したのだとすれば、
その動きはISM景気指数など企業の景況感を示す指標に現われているはずだ。

ところが、5月のISM製造業景気指数は米中貿易協議の決裂という
大きなニュースを受けたあとでも52.1と前月(52.8)からの低下は
限定的にとどまり、先行指標である新規受注指数は52.7と
前月(51.7)から逆に上昇した。

もともと貿易問題の影響を受けにくいサービス業の景況感も悪化しなかった。

5月のISM非製造業景気指数は56.9と前月(55.5)に比べ上昇し、
うち雇用指数は58.1と前月(53.7)から大幅に上昇した。

この「雇用指数」は「非農業雇用者数増加幅」との連動性が高いが、
5月の雇用指数の「58.1」は、非農業雇用者数増加幅で言えば
「33万人増」程度の雇用増加に見合う数値だ(図1参照)。

現在発表されている景気指標から言えば、景気悪化を懸念させる要素は小さく、
利下げ観測は先走ったものであると言わざるをえない。

 
●長短金利が大幅に逆転しているようにみえるが・・・

最近の長短金利差の大幅逆転も、リセッションの兆候であることも間違いない。

だが、米10年国債利回りは昨年10月初めの3.2%から直近では2.1%と
1%ポイント以上低下したが、この低下幅のうち半分以上は、
金利が低下するという予想によるものではなく、タームプレミアムの低下によるものだ。

10年国債利回り=今後10年間の平均予想短期金利+タームプレミアム、
と分解できるが、昨年10月の初め時点では、平均予想短期金利が3.4%で、
タームプレミアムがマイナス0.2%だった。

直近6月6日時点では、平均予想短期金利が2.9%と0.5%ポイント低下する一方、
タームプレミアムがマイナス0.8%と0.6%ポイント低下した(図2参照)。

タームプレミアムというのは、投資家が短期投資に比べリスクの高い
長期投資の際に要求するプレミアム分で、プラスになるのが普通だ。

ところが、現状は、
①FRBの国債大量購入による国債需給逼迫、
②株価下落のヘッジのための国債保有意欲の高まり、
などのためにマイナス圏で推移しており、
直近ではマイナス0.8%と過去最大のマイナス幅になっている。

最近のマイナス幅拡大は、直接的には、このうちの①ではなく、
②が大きく作用したものと考えられる。

このタームプレミアムの異常な低下が10年国債利回りを大幅に低下させたわけだが、
実際には、タームプレミアムの低下は10年国債といった長期債利回りだけではなく、
1~3年程度の比較的短期の国債利回りをも低下させている。

そこで、タームプレミアム部分を除いた、平均予想短期金利だけをみて、
本当に長短金利が逆転しているのかをみてみよう。

図3がタームプレミアム部分を除いた平均予想短期金利だけで、
イールドカーブの動きをみたもの。

イールドカーブというのは、満期までの期間を横軸、
利回りを縦軸にとって、プロットしたもので、景気後退懸念が強い場合は、
先行き金利が低下するとの予想を反映して、右下がりの形状になるのが一般的だ。

リーマンショック前の2007年には確かにイールドカーブは右下がりの状態だった。

しかし、直近の動きをみると、6月6日時点での1年金利が2.53%、
2年金利が2.57%、3年金利が2.62%、5年金利が2.73%、
10年金利が2.96%と右上がりで、それぞれ最も短い金利である
FF金利(2.375%)を上回っている。

長短金利は表面上、大幅に逆転しているようにみえるが、実際には、
最近の株価下落を反映したリスク回避の動きによる債券利回り低下が作用しているもので、
実態は典型的な長短金利逆転の状態ではない。

 
●注目される6月FOMCの金利予想は2.375%で横ばいか?

FOMCメンバーの金利見通しなどが発表される6月18~19日のFOMCが、
市場の行き過ぎた利下げ期待にどう対応するかが注目される。

前回3月時点では2021年にかけて利下げを予想するFOMCメンバーは一人もいなかった。

今回は、ひょっとすると何名かのメンバーは利下げを予想することになるかもしれないが、
せいぜい1回の利下げだろうし、利下げ予想が過半数になることもないだろう。

このため、予想中央値は2021年にかけて、2.375%のまま横ばいになるのではないか。

6月の米中首脳会談が物別れになり、株価が再び急落するといったことでもない限り、
市場が9割程度織り込んでいる7月の利下げも考えにくい。

だとすれば、市場の行き過ぎた利下げ観測は幾分沈静化し、
10年国債利回りは2%台半ばまで反発するだろうし、
利下げ期待で上昇している株価も反落するだろう。
 
以上
 
 

https://www.pro-fx.info/ef/pic190610-41.gif

古金 義洋

>> 著者ページはこちら

新着情報

メディア情報

無料講座・メルマガ

おすすめ商品

FXプライムbyGMO FXプライムbyGMO

おすすめ会社

スパンモデル標準搭載

トップに戻る