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FXコラム

2019.07.08

減速続く中国経済

著者:古金 義洋


●6月末の米中首脳会談の行方は?
今後の世界経済及び金融市場を大きく揺るがすであろう不透明要因について、
ここで整理しておきたい。

大きく分けて3つの不透明要因があると考えらえる。

第1に、今月末に大阪で開かれるG20での米中首脳会談の行方がどうなるか。

5月初めの米中貿易協議の事実上の決裂とその後の関税引き上げ
(米国は中国からの輸入品2,000億ドル相当への関税率を
10%から25%に引き上げ)について、
米国側は4月までに米中間で暫定的に合意していた条項について、
中国側が翻意し、手のひらを返したことが原因と非難している。

ただ、中国側からすれば全体的な内容で最終的な合意に達していないのだから、
修正を求めても不思議なことではないという主張だ。

米国の交渉スタイルは相違点を1つずつ、つぶしていくチェックリスト方式だが、
中国は「すべてが合意に至るまでは何ひとつ決まっていない」
と考える包括方式で、どちらのスタイルで交渉していくかが事前に決まっていなかったようだ。

トランプ大統領は中国側との間で暫定合意した条項を中国側が認めなければ、
3,250億ドル相当の中国輸入品に関税を賦課し、
実質的に中国からの全輸入品を対象にする方針を示したが、
中国側からの色よい返事はない。

痺れをきらして、6月10日、トランプ大統領は、
さらに習近平国家主席が首脳会談に応じない場合、
同国からの輸入品への関税率を引き上げると警告した。

しかし、仮に6月末に米中首脳会談が開かれたとしても、
習近平主席は、中国が米国の要求に屈したとみられるような事項で合意することはないだろう。

せいぜい、「今後も交渉を続けていく」といった合意しかないと思われる。

今のところ、「交渉決裂あるいは首脳会談なし」で3,250億ドルの関税賦課となる可能性、
「交渉継続」で関税賦課がとりあえず回避される可能性が、五分五分程度とみられる。

●貿易戦争下でも各国企業の前向きのマインドは今後も維持されるのか?
第2に、「貿易摩擦激化」に実体経済がどう反応するかが不透明だ。

米中貿易戦争というニュースに株式市場は大きな反応をみせる場合が多いが、
米中間相互の関税賦課という点だけに限定した場合、
世界経済に及ぼす直接的な影響はさほど大きくない。

つまり、米国の対中輸出、中国の対米輸出が抑制され、
また、米国内での中国製品値上がり、
中国国内での米国製品値上がりによって
米中それぞれの消費者の購買力が低下するといった直接的な効果だけを計算しても
世界経済に決定的な悪影響を及ぼすことにはならない。

二国間貿易の障害に対して迂回輸出がありうることや
貿易摩擦激化に対して各国が景気対策を実施するであろうことなども考えると、悪影響はより小さくなる。

しかしながら、問題がそうした直接的な影響にとどまらず、

① 「貿易戦争激化で景気悪化は間違いない」といった悲観的な見通しによって、
前向きだった企業の投資・雇用行動が消極化する、
② 過剰反応による株価下落で消費が減退する(逆資産効果)、
③ ファーウェイ問題など米政府の中国企業敵視姿勢により、
アジアにおける製造業のサプライチェーンが麻痺したり、
各国の外資規制強化で国境を越えた投資が停滞する、

などといった事態に発展した場合、
世界経済に及ぼす影響は徐々に深刻なものになっていく可能性がある。

ただ、現時点で5月初めの米中貿易協議決裂の影響をみると、
少なくとも、①や②に関する悪影響はさほど深刻化していないように思える。

各国の企業の景況感に関する5月分の指標をみると、
総じて、貿易戦争の影響を受けやすい製造業の景況感は幾分悪化したが、
悪化幅は思ったほど大きなものではなかった(図参照)。

一方、サービス業(非製造業)の景況感は
米中貿易協議決裂のニュースにほとんど左右されず、堅調を維持した。

もちろん、「貿易摩擦激化の影響が限定的」という
現在の状況が今後も続くかどうかという点は保証の限りではない。

現在は貿易摩擦の影響を受けにくいサービス業の好調や
景気循環のなかでの遅行指標である省力化投資などの設備投資の底堅さによって、
製造業部門の悪化がカバーされている面がある。

しかし、「貿易戦争が長期化する」との前提に立てば、
現実問題として、この先のどこかで、堅調を維持しているサービス業や設備投資の下振れし、
悪影響が広がっていく可能性が高いのではないかと思われる。

●米FRBは物価目標に関する政策の枠組みを変更するのか?
最後に、政策対応、とくに、米国の金融政策についての不透明感が強い。

通常は米国景気の動向が金融政策を大きく左右すると考えられる。

堅調な米国景気の動向をみると現在の米金利は適正水準か、あるいは若干割安にみえる。

しかし、米中貿易戦争下では、中国など米国以外の海外景気は
大幅に悪化する可能性が高いのに対し、米国景気はさほど悪化せず、
海外経済の悪化が米国に跳ね返ってくるまでは、
輸入の減少などによってどちらかと言えば過熱気味になる可能性さえある。

そうした点で言えば、現時点の米国景気から言えば
米金利は適正かあるいは割安だが、
世界経済あるいは長期的な米国の動きを考慮すれば米金利は割高と言える。

金融当局がどちらに焦点を当てて金融政策を実行していくのかが不透明だ。

一方、米国経済のなかだけをみても、景気動向をみると金利は割安だが、
物価動向からみると金利は割高にみえる。

しかも、FRBは今、金融政策の枠組みを再検討しているとされる。

とくに、現在の2%物価目標についての枠組みの見直しが政策を大きく左右する。

具体的には、現在のその時々で単純に2%の物価目標を設けるのではなく、
目標と実際の物価にかい離が生じた場合、
過去にかい離した分も含めて埋め合わせるような政策運営方式に
変更するのではないかとも言われている。

仮に、そうなれば、例えば、過去2年間のインフレ率(コアPCEデフレータ)の上昇率は
年率1.7%と2%に届かなかったわけだから、
今後2年間については平均が2%になるように目標を2%ではなく、
2.3%に引き上げて、物価上昇を容認するような
強力な金融緩和を実施するということも考えられる。

確かに、もし、本当にこうした政策の枠組みの大きな変更があるとすれば、
今、金融市場が想定しているような、7月の予防的利下げや年末に向けての
2~3回の利下げもあるだろう。

●市場は世界経済の大幅悪化リスクを軽視している

今後の経済・金融市場動向を考えるうえでは、以上の通り、

① 米中貿易交渉の成り行き、
② 貿易摩擦激化が実体経済にどの程度の悪影響を及ぼすか、
③ 貿易摩擦激化のなかで米国の金融政策はどうなるか、

という3つの不透明要因があるとみられる。

このうち株式市場が重視しているのは①と③で、
②はどちらかと言えば軽視されているように思える。

すなわち、6月末の米中首脳会談をうまく乗り切れば
株価は底堅い推移を続けるだろうし、
もし決裂した場合には株価の一時的な急落に対し
利下げが実施されるため株価は反発するといった展開が予想されているのではないか。

もちろん、こうした展開の前提になるのは、
現在のように「貿易摩擦激化のなかにあっても実体経済が比較的順調に推移していること」だ。

しかし、本当に重視しなければいけないのは②がどうなるかという点だろう。

仮に、各国企業の前向きのマインドが維持できなくなり、
雇用や投資が下振れするようなことになれば、
予防的利下げや年末に向けての2~3回の利下げでは済まない。

ゼロ金利あるいは量的金融緩和の再開ということも想定しておかなければいけない。

物価目標に関する金融政策の枠組み見直しに関しても、
そうした②についての最悪の事態を想定して検討されていると考えていい。

以上

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古金 義洋

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