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FXコラム

2019.08.13

「予防的利下げ」は米国景気を再浮上させるのか?

著者:古金 義洋


●予防的利下げで米国景気は年後半以降回復すると言われているが・・・

4~6月の米国の経済成長率は年率2.1%と堅調な数字となった。

しかし、景気先行指数は昨年秋以降ほぼ横ばいで推移しており、
景気一致指数も上向きではあるが、上昇テンポは鈍化している(図1参照)。

先行指数、一致指数の前年比は6月時点で
それぞれ1.6%と、2%を割り込んでいる(図2参照)。

景気動向を端的に示す、この2つの指標からみると、
米国景気は足踏み(あるいは中だるみ)状態にあると言える。

過去の景気拡大期の終盤における景気足踏み局面では、
物価上昇率の高止まりなどから金融緩和への転換が遅れ、
景気は結局、リセッション入りしてしまうことが多かった。

しかし、今回は物価安定下で7月から「予防的利下げ」が実施されている。

早めの政策転換で、リセッションに突入した過去の多くの例と違って、
今回はこの「予防的利下げ」が効を奏し、
景気は年後半以降、持ち直すとの予想がもっぱらだが、実際はどうなのか。

景気が足踏み状態を迎えたあと、リセッションに突入することなく、
足踏み状態から脱し、再び拡大していった例としては、
1966年、1995年、1998年、2012年、2016年がある(図2の黒丸部分)。

これらの5つの成功事例では、景気がリセッション入りすることなく、
足踏み状態から脱することができたのはなぜか。

個別にみていくことにしよう。

<1966年のケース>
景気は1965年末以降の金融引き締めの効果で66年11月頃から67年6月頃にかけ、
足踏み状態(ここでの「足踏み」状態は先行指数の前年比2%割れの状態と定義)
となり、加速していたインフレも小休止した。

景気減速とインフレ小休止に伴って金融政策は緩和に転換され、
TB金利は66年9月をピークに67年5月にかけ低下(5.3%→3.5%)した。

この結果、景気は足踏み状態を脱した。

ただ、この時期の金融政策は緩和志向が強すぎた。

その後の米国経済は、軍需景気で67年秋以降インフレ率が再び高まり、
67年後半以降、再び金融引き締めが強化され、
69年12月に米国経済はリセッションに突入した。

<1995年のケース>
1994年からの金融引き締めで1995年10月頃から
96年5月頃にかけ景気は足踏み状態となった。

これに対応した最初の利下げは95年7月と早め
(景気が足踏み状態になる3か月前)で、
96年1月にかけて3度(0.75%)の利下げが実施された。

この結果、景気は足踏み状態を脱した。

<1998年のケース>
1997年7月のタイバーツの切り下げを発端に、
アジアから金融・通貨危機が世界に伝染し、
1998年8月のロシアのデフォルト、
同9月のLTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)破綻で、
米国にも危機が飛び火した。

米国内での金融危機を予防するため
1998年9月、10月、11月に3度(0.75%)の緊急利下げが実施された。

結果的に、実体経済への影響は最小限にとどまった。

<2012年のケース>
リーマンショック後の景気回復は弱々しく、
2011~12年の欧州債務危機の影響もあって、
景気は2012年5月頃から13年5月頃にかけ、足踏み状態となった。

こうした状況に対応して、12年9月に量的金融緩和第3弾(QE3)が実施され、
それが効を奏し、景気は足踏み状態から脱した。

<2016年のケース>
中国景気減速(人民元ショック)、
原油価格急落と15年12月のリーマンショック後の最初の利上げの影響で
16年1月頃から12月頃にかけて景気は足踏み状態となった。

その後1年間、FF金利は0.25~0.5%で据え置かれた。

中国景気持ち直しと原油価格反発、
トランプ政権の財政出動策への期待などから17年には世界経済は回復した。

●今回の「予防的利下げ」は結果的に手遅れになるおそれも

これら5つのケースのうち、景気拡大局面の終盤における利上げのために、
景気が足踏み状態に陥り、
その後の早めの「予防的利下げ」で景気が足踏み状態から脱した、
という事例の典型的な例を挙げるとすれば、
1966年、1995年の2つであったということがわかる。

これに対して、1998年のケースは金融危機を防ぐための緊急利下げであり、
今回の予防的利下げとはかなり性格を異にする。

また、2012年のケースでは、ゼロ金利政策下で、
景気の弱さに対応するために量的金融緩和が行われたが、
これも今回の予防的利下げとは比べにくい。

さらに、2016年のケースでは、
2015年末の0.25%の利上げが景気を足踏み状態にした要因の一つであったことは事実だが、
当時の米景気は、どちらかと言えば、
それ以外の要因である中国景気動向や原油価格の動向に左右され、
実際、「予防的利下げ」ではなく、中国景気の落ち着きと原油価格反発が景気を再浮上させた。

そこで、1966年、1995年の事例からどういうことが読み取れるか、
また、今回の予防的利下げの効果をみるうえで参考にすべきことは何か。

第1に、1966年、1995年のケースでは、
景気が足踏み状態(先行指数の前年比の2%割れ)に入る前の段階で、
より早めに実施されていたという点だ。

1966年の場合、景気足踏み状態入り(先行指数の前年比2%割れ)の1か月前、
1995年のケースでは同3か月前に利下げが実施された。

これに対して、今回は景気先行指数の前年比2%割れが19年6月で、
利下げが7月で、利下げは1か月後だ。

今回の予防的利下げは、この2回に比べると、利下げ実施のタイミングは幾分遅い。

物価の高止まりで金融緩和政策への転換が遅れ、
リセッション入りとなった過去の多くのケース同様、
景気持ち直しのための利下げとしては、すでに手遅れになっている可能性がある。

第2に、金融緩和の効果が出てくるには時間がかかるのが普通で、
この2回のケースでも最初の利下げのあと、
約半年程度、先行指数の前年比の低下傾向が続いた。

この経験からみて、今回も予防的利下げの効果がでてくるのは、
来年以降になる可能性がある。

9月にも追加利下げが実施される可能性がある。

しかし、当面、景気の足踏み状態は続くとみられ、
予防的利下げが成功するか、
それとも手遅れでリセッション入りとなるか、については、
来年にならないと見極めがつかないのではないかと思われる。

第3に、1966年、1995年のケースでは、それ以前の利上げ以外、
景気の足を引っ張る要因は少なかった。

このため、予防的利下げにより高めの金利が修正されたことで、
景気への逆風はなくなり、景気は足踏み状態から脱した。

1966年のケースでは、今回とは正反対で、
ベトナム戦争による軍需が景気を押し上げていた。

この2回に比べると、今回は米中貿易摩擦の逆風が大きい。

その逆風が消えないとすれば、
「予防的利下げ」の景気押し上げ効果は
米中貿易摩擦の逆風によって打ち消されてしまうおそれがある。

景気を再び浮揚させるためには、
かなりの幅(少なくとも1995年並みの0.75%)の利下げが必要になるはずだ。

以上

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古金 義洋

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