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FXコラム

2019.09.02

米金利低下でもドル安にならないのはなぜか?

著者:古金 義洋


●今年に入ってからのドル相場の動きはどうだったか?

米金利低下観測が強まるなか、為替市場ではドル安が予想されていたが、
ドルは円を除く主要通貨に対し、むしろ予想外に底堅く推移している。

FRBが発表するドルの名目・実質実効レート(2006年1月=100の指数)の
昨年末から最近までの推移をみてみよう。

対先進国通貨での名目実効レートは、
昨年末から今年7月末にかけ0.6%上昇したあと、
直近の8月16日までにさらに0.2%上昇した。

対新興国通貨での名目実効レートは、
昨年末から今年7月末にかけ0.7%下落したあと、
8月16日までに逆に2.6%上昇した。

対先進国通貨での実質実効レート
(実質実効レートの計算には物価指標が必要であるため、
実質実効レートは月次のデータしかない)は、
昨年12月から今年7月にかけ0.1%下落した。

対新興国通貨での実質実効レートは、
昨年12月から今年7月にかけ2.5%下落した。

以上から今年に入ってからのドルの動きを要約すると、以下の通りとなる。

まず、対先進国通貨でのドル相場は、ほぼ横ばいだった。

名目レートでは若干ながらドル高気味に推移していた。

ただ、米国と他の先進国のインフレ率の
多少の違い(米国のインフレ率がやや低かった)を考慮した
実質レートでみると、若干のドル安だった。

通常、米国と他の先進国のインフレ率には大きな違いはないと考えられ、
名目実効レートでみても実質実効レートでみても、動きに大差はない。

8月に入ってからも対先進国通貨でみたドル相場はほとんど動いていない。

一方、対新興国通貨でみると、7月までドルは名目でやや下落したが、
新興国のインフレ率が米国に比べ高いことを考慮した実質レートでみると、
ドルは新興国通貨に対し、かなり下落していたことがわかる。

しかし、8月に入り、ドルは一転して上昇した。

中国人民元やアルゼンチンペソなど
一部新興国通貨の下落などが影響したと考えられる。

ちなみに、ドルの対中国人民元相場は
7月末から8月16日にかけて2.4%上昇、
ドルの対アルゼンチンペソ相場は同期間で約25%上昇した。

●トランプ減税と保護主義関税がドル高につながった可能性

8月以降の人民元安などの問題は別として、
今年に入ってからのドルの動きのなかで、
市場関係者が疑問視しているのは、
「米金利が低下し他の先進国との金利差が縮小しているのに、
他の先進国通貨に対しドル安になっていないのはなぜか」という点だ。

図1は米国と欧日の長期金利差、対先進国通貨での
ドルの名目実効レートの動きをみたものだ。

米国と欧日の長期金利差については、米国の10年国債利回りから、
ドイツと日本の10年国債利回りの加重平均値
(ユーロ圏と日本のGDP比率である65対35で加重平均したもの)を
差し引いたものを使った。

米国10年債利回りがピークをつけた昨年11月以降の動きをみると、
米国の金利低下が急で(3.2%→1.5%)、
これに対し、欧日の金利についてはマイナス域に入っていることもあって
低下がより緩やかだった(0.3%→マイナス0.5%)。

この結果、米国と欧日の金利差は縮小(2.8%→2.1%)した。

これに対し、ドルの対先進国通貨での実効レートは前述した通り、
横ばいで推移しており、金利差縮小の影響を反映していない。

この理由としては、以下の2点が重要と考えられる。

第1に、為替相場は、金利差を背景としたお金の動きだけではなく、
実物経済の動きによっても左右されるという点に注意しなければならない。

確かに、資産市場では金利差が為替相場を決める重要な要因であることは間違いない。

すなわち、金利が上昇(低下)する通貨が高い(安い)という関係がある。

しかし、実物経済(財・サービスの市場)では、
金利と為替相場の関係は、必ずしも、金利高→通貨高という関係にはならない。

貯蓄投資バランスは、下式の通り、貿易収支に一致する。

民間貯蓄-民間投資+財政収支=貿易収支・・・①

このため、例えば、金利低下で投資が増加して①式の左辺が減少すれば、
それに合わせて右辺も減少しなければならず、
そのために為替相場は髙くならなければいけない。

結果として、財・サービス市場のバランスを考慮すると、
金利低下が通貨高を招くことになる。

2018年にはトランプ減税と保護主義政策が米金利高・ドル高を招いた。

すなわち、トランプ減税は財政収支を悪化させ、
また、保護主義政策は貿易収支を改善させる効果が期待された。

財政収支の悪化で①式の左辺が減少し、
一方、保護主義政策→貿易収支改善で右辺が増加することになったため、
そのうえで、①式をバランスさせるためには、
金利が上昇して投資を減少させて左辺を増加させるか、
ドル高になって貿易収支を悪化させ右辺を減少させるか、
それともその両方か、によって、①式をバランスさせる必要があった。

結局、2018年には金利上昇とドル高の両方が起こったと考えられる。

過去において同様なことが起こったのは、
1980年代前半であり、レーガン政権時の財政赤字拡大による米金利高・ドル高だった。

さらに、今回は今年に入り、
景気が比較的堅調な中での予防的利下げ観測の高まりから長期金利が低下し、
それが①式の左辺を一段と減少させた可能性がある。

だとすれば、それに見合って右辺も一段と減少しなければならず、
それが最近のドルの堅調な推移(ドル高)につながったとも考えられる。

このように、為替相場の動きをみる場合、
資産市場のバランス(お金の流れ)だけでなく、
財・サービス市場のバランス(実物経済の動き)も考慮しなければならない。

図1をみてもわかる通り、金利差と為替相場はある程度連動していると言えるが、
両者の連動性はさほど強くない。

金利の動きが為替相場の動きに先行することもあれば、
為替相場の動きが金利の動きに先行するケースもある。

ただ、仮に、今後、予防的利下げによる景気下支え効果が効かず、
本格的な景気悪化で民間投資の減少傾向がはっきりしてくれば、
①式の左辺は増加するだろう。

そうした場合には、金利低下(→左辺の減少)と
ドル安(右辺の増加)が、①式のバランスのために必要となる。

その際は、資産市場からみても、財・サービス市場からみても、
米金利低下とドル安が並行して起こることになる。

●米独金利の大幅な格差から言えば、ドルの対ユーロ相場はもう少しドル高になってもおかしくない

金利差縮小がドル安のつながっていないもう一つの理由は、
主として、米欧金利差とユーロ相場の動きにある。

図2でみる通り、ドルの名目実効レートの動きは、
過去、円ドル相場ではなく、ユーロドル相場の動きに大きく左右される。

最近のドル相場は対円では下落しているが、
対ユーロでは上昇傾向が続いており、
最近のドル実効レートが堅調に推移しているのは、対ユーロでのドル高傾向が主因だ。

そこで、米独金利差とドルの対ユーロ相場の動きがどうなっているかをみてみよう。

図3にみる通り、米独金利差は18年10月にかけて拡大したあと、
幾分縮小しているが、金利差は2.3%と、水準としてはかなり大きく開いたままだ。

金利差が比較的安定していた
2015~17年の平均水準(平均1.7%程度)をかなり上回っている。

これに対して、ドルの対ユーロ相場は
現在1ドル=0.9ユーロ程度
(通常の外貨通貨建て表示で言えば、1ユーロ=1.1ドル程度)で、
2015~17年の平均水準(1ドル=0.9ユーロ)とほぼ同程度だ。

2015~17年当時と比較した金利差の水準から言えば、
もう少し、ドル高・ユーロ安になっても不思議ではないということになる。

ちなみに、米独金利差とユーロ相場の動きの連動性が
比較的強かった2005~2016年のデータから、
最小二乗法でユーロ相場と米独金利差の関係を求めると、
ドルの対ユーロ相場=0.7158+0.089×米独金利差
となる。

現在の米独金利差(2.21%程度)からドルの対ユーロ相場の適正水準を求めると、
1ドル=0.912ユーロとなり、通常の外貨通貨建て表示で言えば、
1ユーロ=1.096ドル程度となる。

直近のユーロ相場(1ユーロ=1.11ドル程度)に比べて、
もう少しユーロ安・ドル高でもおかしくないという計算になる。

つまり、足もとで米金利が低下するなかでのドルの堅調な推移は、
単なる水準訂正の動きとも考えられる。

まとめると、最近の米金利低下にもかかわらず、
ドルが堅調に推移しているのは。次のような理由によると考えられる。

第1に、トランプ減税や保護主義関税に加え、
米国の予防的利下げ観測の高まりにより、
米国国内経済の貯蓄不足・投資超過観測が強まり、
財・サービス市場のバランスからみた、ドル高圧力が強まっている。

第2に、米国と欧州の金利差は足元で縮小しているが、
金利差の水準は高水準で、なおドル高・ユーロ安になりやすい状況にある。

ただ、これらの要因は一時的なものとも言えなくない。

米国経済の減速が明らかになり、
予防的利下げでは景気が持ちこたえられなくなる場合は、
この先、財・サービス市場からみても、資産市場からみても、
明らかな米金利・ドル安傾向が強まる可能性がある。

その際、米独金利差についても、一段と縮小傾向を辿る可能性があり、
現在の一時的なドル高・ユーロ安も続かないと考えられる。

以上

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古金 義洋

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