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FXコラム

2019.10.04

日本は景気後退局面入りの公算大

著者:古金 義洋


●CIによる景気判断で5月に「下げ止まり」と上方修正されたのは、
連休の季節調整の不備が主因。景気後退の3条件は満たされた

日本の景気が後退局面に入っている可能性が高まった。

3月19日配信分の当レポートでは「日本の景気は後退しているのか?」と題し、
景気後退と言えるためには、
①景気悪化が各方面に波及していること、
②景気悪化の程度が大きいこと、に加え、
③景気悪化の期間が長いこと、が必要とされていることを説明した。

当時から景気は昨年10月頃をピークに後退局面に入っていた可能性が高いとみられていたが、
当時は、まだ「景気悪化の長さ」という点では、まだ、
「景気後退」というには十分ではなかった。

しかし、今や、①、②、③の条件がすべて満たされようとしている。

戦後の景気後退のなかで景気後退期間が最も短かったのは、
1951年6月~同10月の4か月だった。

仮に、昨年10月頃が景気のピークであったとすると、
景気悪化の期間は、多くの経済指標が出揃っている8月まで、
10か月経過していることになる。

景気が後退局面に入ったかどうかの形式的な最終判断は、
内閣府に設置される「景気動向指数研究会」の議論で、
景気のピークとボトムの年月を決めるという作業を通じて行われる。

ただ、景気のピーク時を決める同研究会が開催されるのは、かなり後で、
ほとんどの人が忘れた頃に行われるため、
この最終判断がどうなるかはあまり意味がない。

通常、注目されるのは、景気動向指数CI(コンポジットインデックス)の
一致指数の動きから、景気動向の判断が行われる(図1参照)。

ちなみに、景気同指数CI一致指数は、景気の動きに一致して動く、
①生産指数、
②生産財出荷指数、
③耐久消費財出荷指数、
④投資財出荷指数、
⑤所定外労働時間指数、
⑥小売販売額、
⑦卸売販売額、
⑧営業利益、
⑨有効求人倍率、

という9つの景気指標を合成して作られており、
その動き自体が景気の動きを示す。

そして、その景気動向指数CIによる景気の基調判断は今年に入って、
かなり頻繁に変わってきた。

昨年までは「足踏み」だったが、
今年1月に「下方への局面変化」に下方修正された。

内閣府によれば、「足踏み」の定義は「景気拡張の動きが足踏み状態になっている」こと、
「下方への局面変化」の定義は「景気の山がそれ以前の数か月にあった可能性が高い」である。

その後、3月には、さらに判断が下方修正され、
「下方への局面変化」から「悪化」へと変わった。

「悪化」の定義は「景気後退の可能性が高い」である。

4月も「悪化」で据え置かれたが、5月は「下げ止まり」へと一転して上方修正された。

「下げ止まり」の定義は「景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高い」である。

6、7月も「下げ止まり」のまま据え置かれた。

5月の「下げ止まり」への上方修正は、
大型連休についての鉱工業生産・出荷関連指標の季節調整が不備であったことが主因だ。

CI一致指数を構成する9つの指標のうち、前述した通り、4つは生産・出荷関連の指標だ。

5月はこの4つの指標の異常な上昇により、CI一致指数全体が押し上げられた。

これはあくまでも季節調整の不備による一時的な上昇だったが、
CIによる基調判断の修正はCIの数値の動きだけに基づく機械的なものであり、
やむをえない。

例えば、「悪化」は「3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」し
「当月の前月差の符号がマイナス」であれば「悪化」となる。

「下げ止まり」は「3か月後方移動平均の符号がプラスに変化し、
プラス幅が1標準偏差(0.77程度)以上」で「当月の前月差の符号がプラス」になると
「下げ止まり」になる。

数値の動きだけによる機械的な判断であるため、
原因が季節調整の不備であることがわかっていても、
判断は数値の動きだけによって変わってしまう。

おそらく、大型連休についての季節調整がまともであれば、
5月の「下げ止まり」へ上方修正はなく、「悪化」の判断が続いていたと思われる。

7日の14時に発表される8月の景気動向指数では、5月の異常値の影響がなくなり、
「3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」し
「当月の前月差の符号がマイナス」という条件が満たされることになるだろう。

このため、判断は再び「悪化」になるはずだ。

もちろん、8月までの景気指標が「景気後退」の条件を満たしたとしても、
9月以降の景気が急回復していたとすれば「景気後退」にならない可能性もあるが、
その可能性はかなり低そうだ。

株式市場は米中貿易協議に期待しているが、うまくいったとしても、
せいぜい米国による対中追加関税(10月15日予定の第1~3弾の30%への引き上げを延期、
12月15日予定の第4弾関税実施延期などと引き換えに、
中国が米国から農産物を購入する、といった合意にとどまるだろう。

逆に、米国内で、米国年金の中国株投資や中国企業の米国上場など
米中間の資本取引を規制しようとする動きもあり、
そうした動きに対して中国側が態度を硬化することもあるため、
最悪の場合、交渉決裂といった事態もないわけではない。

米中の覇権争いは続き、今後も、それが世界のモノ、カネの取引に
悪影響を及ぼすことは明らかだ。

先行き不透明感から、世界の企業の雇用・投資姿勢は後ろ向きにならざるをえない。

来週の米中貿易協議で世界経済の先行き不透明感が払拭されるといったことは考えにくい。

国内では、9月は消費税前の駆け込み需要などで一時的に、
小売販売額や卸売販売額などの一致指標が上向いている可能性がある。

しかし、仮に、駆け込みがあったとすれば、必ずその反動が起こるはずで、
9月に上振れした分、10月は下振れするだろう。

消費者のマインドを示す消費者態度指数は9月に35.6と下落に拍車がかかり、
前回消費税率引き上げ時の14年4月の水準(37.1)を割り込んだ。

企業のマインドも落ち込んでいる(図2参照)。

9月調査日銀短観によれば、
米中貿易摩擦の影響を直接受けている大企業・製造業の業況判断DI
(「良い」と考える企業の割合マイナス「悪い」と考える企業の割合)は、
プラス5と3四半期連続で低下した。

前回6月調査ではやや上向いた大企業・非製造業の業況判断DIも
今回はプラス21と低下し、製造業悪化の影響が非製造業にも及び始めていることを示す。

今回の消費増税は比較的良好な非製造業景気の悪化に拍車をかけることになり、
日本の景気後退を決定的なものにするだろう。

●金融・財政面からの景気刺激策が当面見送られ、催促相場になる可能性も

こうしたなか、10月30~31日の日銀金融政策決定会合がどう動くかが注目される。

追加緩和策について、日銀は、
① 短期政策金利の引き下げ、
② 長期金利操作目標の引き下げ、
③ 資産買い入れの拡大、
④ マネタリーベースの拡大ペース加速、
という4つの選択肢を示している。

これらの選択肢のうち、黒田総裁は9月19日の記者会見で、
「超長期金利が下がり過ぎると年金や生保の運用利回りが下がり、
消費者マインドに影響がありうる」
「イールドカーブはもう少し立った方が望ましい」
と述べた。

さらに、24日の記者会見では、
「(追加緩和に踏み切る場合は)短中期の金利をさらに下げる必要がある」
「(短期金利を下げるなら)0.1%のマイナス金利の深堀りを選択肢として排除する必要はない」
「(経済や物価への効果としては)短中期の金利が非常に重要だ」
と述べ、「短期政策金利の引き下げ」を追加緩和策の第1候補としているようにみえる。

ただ、行き過ぎたマイナス金利が金融機関の収益を悪化させていることや
量的金融緩和が期待通りの物価押し上げ効果を生まなかったこと、
などを考えると、日銀は追加緩和策の効果と副作用を天秤にかけながら判断せずるをえない。

追加緩和策として日銀が使えるカードは多くない。

金融緩和が実体経済に及ぼす影響が必ずしもはっきりしないため、
株価や円相場の動きを眺めながら追加緩和策を打ち出すことになるだろう。

仮に、政策決定会合時に、円相場や株価が比較的安定しているようなら、
緩和を見送るということもあるのではないか。

一方、財政政策はどうか。

景気動向指数CIによる景気判断はあくまでも機械的な判断であり、
政府が公式見解として景気をどう判断するかは、
毎月20日前後の内閣府「月例経済報告」を待たなければいけない。

9月19日の前回報告での景気判断は
「景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」だったが、
基本的に「緩やかに回復」という判断は今年に入ってから、
CIによる機械的な判断が頻繁に変わっているにもかかわらず、
ずっと維持されてきた。

では、10月20日頃の次回月例経済報告で景気判断は下方修正されるのか?(表1参照)

2008~09年のリーマンショック時をみると、
2008年2月に景気がピークアウトし、
その翌月の3月に政府の景気判断は「回復」から「足踏み」に下方修正された。

今回も下方修正されるとすれば「足踏み」に変わるのだろうが、
下方修正されるとすれば安倍政権としてはタイミングが非常に悪い。

安倍政権は三度目の正直で、万全の対策をとったうえで、
今回の消費税率引き上げに踏み切った。

今回、下方修正することになれば、
「景気は土壇場で踏みとどまっていたのに
消費税率引き上げが景気を悪化させてしまった」、あるいは、
「消費増税が景気を悪化させるのではないかという意見が多かったのに、
安倍首相の無謀な決定が景気悪化を決定的にした」
といった政権批判が強まりかねない。

こうした政治的な思惑により、政府は景気判断の下方修正をためらうのではないか。

だとすれば、まず、政府は消費税率引き上げの景気への影響を見極めることを口実に、
当面、様子見の姿勢を貫くだろう。

財政面からの機動的な景気下支え策が打ち出されることもないのではないか。

実際に景気がじりじりと悪化していくなかで、
日銀、政府ともに思い切った対策がうちだせずにいるとなると、
株式市場がそれを催促するような相場展開になる可能性が強い。

以上

 

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古金 義洋

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