元チーフディーラー集団(柾木 利彦、西原 宏一、伊藤 寿彦、竹内 のりひろ)+各分野一流の執筆陣の相場記事

無料講座・メルマガ

おすすめ商品

2020年版 最短で1億円を築くFXの稼ぎ技229 相場の壁とレンジで稼ぐFX

おすすめ会社

FXプライムbyGMO

スパンモデル標準搭載

FXコラム

2020.02.04

新型肺炎の影響をどうみるか?

著者:古金 義洋


●SARSの時はどうだったか?
 
まず、前回2002~03年のSARS流行時と比較した場合、今回の新型肺炎の悪影響は明らかに大きくなるだろう。

SARSは02年11月に広東省で症例が報告されてから03年7月のWHOによる封じ込め成功の発表まで、8か月間かかった。

ただ、中国政府は03年2月までWHOに症例の報告をせず、SARSの問題が中国メディアで取り上げられるようになったのは4月になってからだった。

人的被害は、香港や広東省を中心に世界37か国で感染者が8,096人、死亡者は774人だったが、経済に及ぼした影響は限定的だった。

中国の成長率は暦年でみると02年の前年比9.1%から03年に10.0%と逆に加速した。

四半期ベースでは02年10~12月の同9.1%から03年1~3月に11.1%に加速した後、4~6月に9.1%に減速したが一時的で、その後7~9月、10~12月はそれぞれ10.0%と2桁成長に戻った。

小売売上高は03年3月の前年比9.3%増から、4月7.7%増、5月4.3%増と鈍化したが、6月8.3%増と戻った。

鉱工業生産は03年3月の前年比16.9%増から、4月14.9%増、5月13.7%増と鈍化したが、6月16.9%増と戻った。

中国経済への悪影響はメディアで注目され始めた03年4月から5月にかけて、約2か月間の間、強まったあと、6月には平常状態に戻っていたことがわかる。

当時の世界の株価の動きをみると、ITバブル崩壊と同時多発テロの影響などから2000年から03年3月頃にかけて下落傾向を辿り、米国株もピークから5割程度下落したが、その後は反発基調となった。

このため、SARSだけの影響を特定するのは難しいが、上海株価指数で言えば03年4月15日から同25日にかけて約9%下落したが、下げは一時的だった。

香港ハンセン指数も03年4月7日から同25日にかけて約6%下落したが、ハンセン指数はその後、米国株の動きにつれ、反発基調を辿った。

生産、消費やGDPの増加テンポが「減速」しただけにとどまった当時に比べて、今回は少なくとも20年1、2月の生産、消費は前年比「減少」する可能性がある。

ブルームバーグによれば、中国と欧米のエネルギー業界関係者の話として、「中国の石油需要は消費全体の20%に相当する日量300万バレル程度減少した」と伝えている。

エネルギー消費の減少は生産・消費活動が減少していることを示唆する。

2月3日から始まるはずだった中国企業の生産が再開されるのは中旬以降とされるが、予定通りの生産再開となるかどうかも疑問だ。

おそらく、中国政府が公表している感染者数、死亡者数などのデータは過少である可能性も高く、こうした点も疑心暗鬼を強めている。

中国政府は2月3日時点で、死亡者が361人、感染者数が1万7,205人、さらに2万1,558人に感染の疑いがあると発表している。

ただ、武漢から日本へチャーター機で帰国した日本人565名のうち、8人の感染が確認されており、ここから単純に計算した人口比の感染率は1.4%。

1,000万人都市である武漢だけで感染者が14万人に達していても不思議ではない。

武漢が封鎖される直前に武漢の人々の半分が武漢を脱出したとも言われ、7万人程度の感染者が中国全土あるいは海外に広がったことになる。

SARSの場合は、症状が出た人を隔離するだけで良かったが、今回の新型肺炎ではこうした多くの隠れ感染者をどのように隔離できるのだろうか。

SARSの時は経済的な悪影響は限定的だったが、今回は当時と比べることはできないのではないかと思われる。
 

●インバウンド需要の落ち込みだけなら悪影響はさほど大きくないが・・・
 
仮に、当局の封じ込め政策が前回のSARS並みにうまくいき、経済活動の落ち込みもさほど大きくなく、また、時間的にも2か月間程度で混乱が収束したとしても、世界経済への悪影響は当時に比べて大きくならざるをえない。

中国経済の世界のGDPに占める比率は当時の4%程度から現在は18%程度へと4倍になっているためだ。

IMFはSARSによる世界経済の減速幅は0.1%程度にとどまったと試算しているが、悪影響は最小でも0.4%以上になる。

1月時点でのIMFの世界経済見通しによれば、19年2.9%のあと20年は3.3%へ回復するとの見通しだったが、20年の見通しは2.9%以下に下方修正となる計算だ。

世界経済への悪影響という点で、特に注目されているのは、ヒトの移動が止まることによる、いわゆるインバウンド需要の落ち込みだ。

中国の国際収支統計によれば、中国人の観光による海外への支払いは2010年の549億ドルから18年には2,774億ドルと約5倍に増加した。

これに対して、海外旅行者の中国への観光による中国側への支払いは2010年458億ドル、18年404億ドルとほとんど増えていない。

差し引き観光収支は10年の91億ドル支払い超過から18年には2,369億ドルの支払い超過への支払い超過幅が急拡大している。

モノの輸入も2010年の1兆2,395億ドルから18年には2兆223億ドルへと金額的には拡大しているが、増加率でみると、中国人の海外旅行ブームが2010年代以降、世界経済を大きく押し上げてきたことを示している。

今回の騒動により、仮に、中国人の海外旅行による海外への支払いが半年間、半減したとすれば、それだけで、693億ドル(=2,774×0.5×0.5、約7.6兆円)の世界経済押し下げ効果になる。

また、日本側の統計によれば、政府が観光立国の看板を掲げたこともあって、2014年まで支払い超過(つまり日本人の海外旅行による支払いの方が多かった)だった旅行収支は、2018年には全体で2.4兆円の受け取り超過になった。

うち中国との関係では2018年に1兆3,493億円の受け取り超過になっている。

今後、仮に、中国人の日本国内旅行、日本人の中国旅行が、双方とも、半年間、半減したとすれば、3,400億円程度(=13,493×0.5×0.5、約7.6兆円)の国内景気押し下げ効果になる。

したがって、注目されている「インバウンド需要」だけを取り上げると、半年間のGDPを0.1%程度押し下げるだけであり、それだけでは決定的な影響を及ぼすものではない。

ただ、もちろん、悪影響はこうしたインバウンド需要だけではない。

(1)中国景気悪化により中国向け輸出の落ち込む可能性が高いこと、
(2)中国国内での物流や人の流れが滞ることで国際的なサプライチェーンが寸断され、それによって日本国内での生産活動も停滞するおそれがあること、
(3)日本国内でも感染が広がるのではないかとの懸念が国内での一層の消費停滞につながるおそれがあること、

などを考えると、日本経済の後退局面入りは避けられないように思われる。
 
 
以上

古金 義洋

>> 著者ページはこちら

新着情報

無料講座・メルマガ

おすすめ商品

2020年版 最短で1億円を築くFXの稼ぎ技229 相場の壁とレンジで稼ぐFX

おすすめ会社

FXプライムbyGMO

スパンモデル標準搭載

トップに戻る