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FXコラム

2020.03.02

新型肺炎の影響(日本の景気は?)

著者:古金 義洋


●中国の経験からみても2週間程度のイベント自粛だけでは感染は止まらない
 
新型肺炎が世界経済に及ぼす影響については、これまでは、火元の中国経済の麻痺が、
(1) 各国の中国向け輸出減少、
(2) 国際的な製造業の供給網寸断、
(3) 中国人の海外観光減少、
(4) 原油など一次産品価格下落(→一次産品の生産国の経済悪化)、

などの形で、世界経済に影響を及ぼすと考えられていたが、局面は変わった。

世界各国で広がりつつある感染がそれぞれの国の経済にどういう影響を及ぼすかを考える必要がでてきた。

ウィルスの拡散を抑制するためには人と人ができるだけ接触しないようにする必要がある。

火元の中国では、接触を抑制するため、「集まらない」「外出しない」
という形で人の移動が制限され、そのために経済活動が麻痺状態に陥った。

同様なことを世界各国で行う必要があるとすれば、
世界経済は同様に麻痺状態に陥るのではないかという懸念が強まっている。

中国の動向をみると、強力な封じ込め策によって感染が収束する兆しもみえないわけでもない。

中国国家衛生健康委員会が毎日、公表している感染者数、重症者数、死者数などの
データをみると、このところの「新たな感染者」は
一日300~400人程度と2月上旬の3,000~4,000人から相当抑制されている。

しかも、そのうちほとんどが湖北省であり、湖北省以外の新たな感染者は10人以下にとどまっている。

湖北省を除けば、日本や韓国、イタリアなどの状況の方が悪くなっていることになる。

中国が韓国や日本からの入国制限を強化し始めたのもそのためだ。

中国では「感染者」の定義が頻繁に変わり、発表数値の信頼性に疑問もあるため、
それを鵜呑みにすることはできないが、湖北省の封鎖や外出禁止などの
強権的な措置がそれなりに効いているのではないかと思われる。

濃厚接触者としてカウントされている人の数はなお増加傾向にあるが、
その一日当たりの増加ペースは鈍化している(図1参照)。

過去のデータをみると、濃厚接触者10人当たり感染者が1人でている計算だが、
直近では濃厚接触者の増加ペースが一日当たり4,000人増未満に
とどまっていることからみて、感染者の増加も300~400人程度に
なっているというのも自然なことと考えられる。

もちろん、ここへきて湖北省以外の企業活動が徐々に再開されているため、
再び感染が広がるリスクもないわけではない。

中国における感染の拡大が本当に止まるかどうかについてはもう少し状況をみてみる必要がある。

これに対して日本はどうか。

25日に政府は新型肺炎対策の基本方針を決定し、イベント自粛などが要請された。

また、26日には小中高校の休校も決まった。

オリンピックなどを控え政府の危機感は徐々に強まっていると考えられるが、
中国の経験からみると、これで感染に歯止めがかかるかどうかは疑問だ。

少なくとも、2週間程度、イベントなどを自粛するくらいでは感染に歯止めがかかるとは思えない。

しかも、今回の対策の効果はすぐに表れるわけではない。

ウィルスの潜伏期間と検査結果が得られるまでの時間を考えると、
今後1週間は感染者数の増加は確実であり、検査数が増加していけば
さらにそのペースは加速していくだろう。

政府はもう一段の思い切った政策対応を迫られるのではないか。
 

●観光・レジャー産業を直撃し雇用削減の動きが強まる可能性
 
日本経済はすでに後退局面にあり、今回の新型肺炎の混乱が
それを決定的なものにするのではないかと考えられる。

政府がいまだに「緩やかな景気回復」の判断を変えていない理由の1つは、
雇用が増加していることだが、それについても怪しくなってきた。

1月の雇用関連指標をみると、おそらくは今回の問題を
十分に反映していないとみられるが、すでに軒並み悪化している。

景気の先行指標である新規求人数は前年比16.0%減少した。

景気の一致指標である有効求人倍率は1.49倍と前月の1.57倍から大きく低下した。

景気の遅行指標である失業率も2.4%と前月の2.2%から上昇した。

2月以降は、今回の新型肺炎問題が特に観光やレジャーなどの産業を直撃する。

「宿泊・飲食サービス業がGDPに占める比率は2.5%程度にすぎないから
混乱が多少長期化しても景気への影響は限定的
(1か月間、完全に活動が止まっても年間のGDPに与える影響は
0.2%程度)」との見方もあるが、間違いだろう。

なぜなら、観光立国を目指そうとする政府の方針に乗って
雇用を増やした宿泊・飲食サービス業では、
今回の問題で売上が大幅に減少する一方で、雇用コストに圧迫され、
経営悪化に見舞われるおそれがあるためだ。

倒産や雇用削減なども多発するだろう。

総務省「労働力調査」によれば2017年~19年の3年間で、
就業者(雇用者プラス自営業)は284万人増加したが、
これを産業別にみると、最も増加したのが医療・福祉(3年間で35万人増)で、
宿泊・飲食サービス業(同31万人増)がそれに続く。

この2つで、雇用増全体の2割強を生み出したことになる。

医療・福祉産業については、高齢化の進展で、介護の仕事が増えていることは言うまでもない。

一方、宿泊・飲食サービス産業については、
2017年3月に観光立国の実現に関する基本的な計画として
新たな「観光立国推進基本計画」が閣議決定され、
観光を日本の基幹産業に成長させようという基本方針が示され、
この計画に乗る形で、宿泊・飲食サービス産業では雇用が増加した。

ただ、観光業が本当に日本経済の成長の牽引役になったかどうかは疑問だ。

内閣府「国民経済計算」によれば、
名目GDPの2016年から2018年(2019年の数字は未発表)までの2年間で
11.6兆円増加したが、宿泊・飲食サービス業の付加価値(名目GDP)は
同じ2年間で1,960億円増加したにすぎない。

ちなみに、介護・福祉などの産業も労働集約的と考えられるが、
国民経済計算の統計のなかで「医療・福祉」に相当する
「保健衛生・社会事業」の名目GDPは同じ2年間で1.6兆円増加し、
それなりに雇用増加に見合う付加価値を生み出していた。

図2は、宿泊・飲食サービス業の就業者が全産業の就業者に占める比率と
宿泊・飲食サービス業のGDPが日本全体のGDPに占める比率を比較したものだ。

GDPからみた宿泊・サービス業のウエイトが2.5%程度しかないのに、
就業者からみたウエイトは6%以上であり、この数値からみてもわかる通り、
観光業は労働力を大量に投入しなければ成果が得られにくい
「労働集約型産業」だと言える。

しかも直近は政府の方針に乗って、就業者からみたウエイトが一段と上昇する一方、
GDPからみたウエイトは低下し、両者の乖離は広がっている。

比較優位の観点から言えば、相対的に労働力の豊富な国が
労働集約型の産業を伸ばすべきで、日本のように人口が減少しつつある国は
本来、技術集約型あるいは資本集約型産業を伸ばそうとするのが
経済理論からみて自然なことだ。

観光立国政策は理屈上は間違った政策と言わざるをえず、
間違った政策が被害を大きくする可能性がある。
 
 
以上
 

古金 義洋

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