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FXコラム

2020.06.01

ヒトの国際的な移動制限の影響

著者:古金 義洋


https://www.pro-fx.info/ef/pic200601-41.png
 
●米国では人口増加分の4割弱を移民増加で補っている
 

コロナ問題は国境を越えた人の移動に急ブレーキをかけている。

日本ではこの問題について考える際、インバウンド需要のことを連想するのが普通であろうし、
確かに、現在の日本ではインバウンド需要が激減し、
それに依存していた観光産業が苦境に立たされている。

日本のように人口減少が進む国で労働集約型の観光業は競争力を保てないことは明らかだ。

しかも、今回のコロナ問題で、感染のリスクがある、ヒトによる「おもてなし」は、
余計なお世話になりかねず、観光業は全体として業態の変化を余儀なくされるだろう。

ただ、多くの先進国にとって、ヒトの移動が制限されることは、
インバウンドなどの需要面だけではなく、労働力人口という供給面に影響を及ぼす。

日本を含め、多くの先進国では高齢化が進み、労働力人口が伸び悩む、
あるいは減少しつつあり、途上国などから入ってくる移民の労働力を依存しようとしているためだ。

移民国家と言われる米国では2010年から2018年にかけて
移民は3,845万人から4,453万人へと607万人増加した。

全体の人口は同期間で3億1,068万人から3億2,760万人と1,693万人増加しているが、
総人口増加分のうち約36%を移民増加によって補った計算だ。

人口は同8年間で年率0.67%増加しているが、仮に、移民の増加がなかったら、
人口増加は同0.43%になっていたことになる。

人口増加率の縮小は労働人口増加率の縮小を意味し、さらに経済成長テンポの鈍化を意味する。

労働生産性を一定とすれば、現実には年率2.25%であった
2010~2018年の米国の成長率は2%程度に鈍化していた計算になる。

また、2018年に21兆4,300億ドルだった米国の名目GDPは
21兆300億ドルと約4,000億ドル程度減っていた計算になる。

日本でも19年4月に外国人労働者受け入れを拡大する新制度が始まっった。

今回のコロナ問題がなければ、人手不足が深刻化していた介護、外食、建設、
ビルクリーニング、農業などの業種で外国人労働者を多く雇うことになっていた。

今は自粛による需要急減で外食産業などでは一転して人手余剰になっているが、
こうした業種は構造的な人手不足業種であることには変わりない。

外国人労働者の入国制限が続けば、労働力不足という供給面の問題が経済活動を圧迫することになる。
 

●リーマンショック後、モノとカネの動きにブレーキがかかり、今回、ヒトの動きにも急ブレーキがかかった
 
一般的に、グローバル化というのはヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に行き来できることを言う。

1989年、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統合、ソ連が消滅 し、
東欧諸国が市場経済側の陣営に入った。

1978年から鄧小平の指導のもとで改革開放政策が実施され、
計画経済から市場経済へと切り替えていた中国も加わり、
1990年代の世界はヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に行き来するグローバル化の時代を迎えた。

しかし、こうしたグローバル化の動きはリーマンショック以降、急速に衰えた。

国境を越えたモノの動きを示す世界の貿易量は1985年頃までは年率3%程度で、
GDP成長率とほぼ同水準の緩やかな増加だったが、その後は貿易量の伸びが急加速し、
GDP成長率もそれにつれて加速していた(図1参照)。

自由貿易協定などにより貿易障壁が低下する一方、IT革命による国際通信網の発達で、生産工程が国際化し、
グローバルサ プライチェーンができたことなどが貿易量の押し上げにつながったためだ。

しかし、リーマンショック以降、世界経済の成長率は減速し、つれて貿易量の伸びも鈍化した。

両者の伸びは それぞれ年率3%台に低下し、1980年代前半の水準に戻った。

一方、国境を越えたカネの動きをみるための指標として、海外直接投資をとりあげると、
これも 貿易量と同様にリーマンショックを機に急速に衰えた。

図2でみる通り、世界の海外直接投資は1980年代後半までGDPの1%以下にとどまっていたが、
1990年代以降、同比率は大きく上昇し、ピーク時の2007年には5.3%に上昇していた。

しかし、リーマンショック後の同比率は急低下し、2010年代以降は概ね2~3%の範囲内で推移している。

他方、国際的なヒトの移動についても、2000年代以降、
欧米先進国においてテロへの不安などから移民排斥の動きが強まった。

米国では2001年の同時多発テロを契機に移民やイスラム教徒を排斥しようという動きが起こり、
トランプ大統領は移民流入 制限のための壁を建設しようとした。

欧州でも移民排斥を主張するポピュリズム政党が台頭した。

ただ、ヒトは自身で意思を持ち、多大な犠牲を覚悟してでも、
自分とその家族のために所得・治安面で大きく劣る途上国から先進国へと自ら移動しようとする。

グローバル化への反発が先進国において政治的な移民排斥の動きを強める半面、
グロー バル化のなかでも解消されなかった格差が途上国から先進国に移り住もうとする移民の動 きを強めた。

ちなみに、低所得国と高所得国との所得格差は20倍強で、この30年間、ほとんど変わっていない。

途上国から先進国に移り住めば、稼ぎが20倍になる。

このため、途上国から先進国へ移り住もうというヒトの動きは続いていた(図3参照)。

だが、今回のコロナ問題で、ついに、ヒトの動きにもブレーキがかかった。

ヒト、モノ、カネのどれをみても1990年代以降のグローバル化が終わったと判断していい。
 

●ヒトの動きの制限が完全撤廃されれば、世界のGDPは2倍以上にも
 
ヒトの国際的な移動が世界経済を押し上げる効果は大きい。

そもそも先進国と途上国の経済(賃金)格差が存在するのは、
先進国の労働者1人当た りの労働生産性が高く、途上国の労働者の1人当たり労働生産性が低いことが原因だ。

途上国から先進国に労働者が移動することで、移動した人の稼ぎは20倍になる。

移動した人数分だけ、世界のGDPは増える計算になる。

実は、ヒト、モノ、カネについてそれぞれ国境を越えた動きの制限を撤廃した場合に、
最も大きなGDP押し上げ効果を期待されるのが、ヒトの動きの制限撤廃だ。

Michael A. Clemensの“Trillion-Dollar Bills on the Sidewalk?”によれば、
モノ(貿易)の制限の撤廃の場合の世界のGDP押し上げ効果は0.3%~4.1%、
カネ(投資) の制限撤廃の場合は同0.1%~1.7%の押し上げ効果があるのに対し、
ヒト(移民)の制限の撤廃の場合は67%~147%という桁違いの押し上げ効果があるとしている。

そうした膨大な利益は貧困国の人口の少なくとも半分が富裕国に移動するだけで生まれ、
世界の貧国者の5%以下の人々が移動しただけでも、
貿易と資本取引を制限している政策的障壁のすべてを完全撤廃した場合よりも大きな利益を生むと述べている。

もちろん、こうした莫大な利益を享受するためには、多くの移民が流入してきた国において、
高い生産性に変化がないことが大前提だ。

移民の大量流入によって、受け入れた国において、
政治経済制度やコミュニティの相互信頼感などが変わり、
それが受け入れ国の生産性を低下させてしまうおそれがある。

そうした移民の大量流入が問題を引き起こすおそれがあるにせよ、
グローバル化の時代のなかで、ヒトが国境を越えてある程度自由に動き、
それが世界経済を大きく押し上げてきたのは確かだろう。

コロナ問題は、そうした大きな恩恵をもたらしてきたヒトの動きに急ブレーキをかけるものとなった。

多くの先進国は高齢化による労働力人口減少を移民で補うことができなくなるおそれがある。

その結果、労働力不足によって先進国では労働者の賃金が上昇し、企業は利益を圧迫されることになる。
 

以上
 

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