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FXコラム

2020.07.06

デフレか、インフレか?

著者:古金 義洋


https://www.pro-fx.info/ef/pic200706-41.png
 

●FOMCはインフレ率を考慮してゼロ金利維持の是非を決定か?
 
7月1日に発表された6月FOMC議事要旨によると、
FOMCは新型コロナウイルス感染拡大を受けた景気後退からの回復を支援するため、
一定の条件が満たされるまで低金利を維持すると明示する案が検討されていることが分かった。

議事要旨によると、当局者は、金利決定方針を特定の経済指標などに関連付ける案に
「総じて支持」を示した。

金利決定をどういった経済指標等に関連付けるかについては、
(1)インフレ率が目標の2%に達するか、もしくは小幅に上回るまで低金利を維持すると約束する案を「多く」の参加者が支持、
(2)金利変更を失業率と結び付ける案について「数人」の参加者が支持、
(3)経済指標ではなく、将来の特定の時期まで緩和政策を維持すると表明する案を「別の数人」の参加者が支持したようだ。

コロナショックによる需要消滅で需給ギャップが拡大したり、失業率上昇で賃金が低下したりと、
デフレ懸念が強まるのではないかという見方が多いなかで、意外にも、
FOMCの多数意見はインフレ率を問題視していることがわかる。

5月26日に配信したレポート「デフレ再来なのか?」では、
都市封鎖による需要消滅で物価は下落しているものの、今後の物価上昇要因は意外に多いことを述べたが、
再度、ここで物価動向について整理してみたい。

通常、物価動向を左右するのは、
(1)需給(需給がひっ迫すれば物価が上がる)、
(2)コスト(コストが増加すれば物価が上がる)、
(3)通貨価値(物価は通貨との対比でみたものであるため、通貨価値が下がると物価は上がる)
の3つだ。

以下ではこの3つについてそれぞれみていく。
 

●企業倒産や失業増で供給力も低下する
 
まず、需給からみて物価はどうなのか?「需給インフレ」はないのか?
新型コロナウィルスの影響は需要面だけでなく供給面にも表れる。

確かに需要は落ち込んでいるが、身近な例では、
飲食店や映画館で席を1つおきに空けて座らなければならず、それだけでサービス供給力は半減する。

そうしたなかで人が戻ってくれば需給はむしろ逼迫することもあるだろう。

経済全体で言えば、企業倒産などによって失業が増えていけば労働投入面から供給力を低下させる。

また、利益減少と先行き不透明感から多くの企業は増産投資を手控えるだろう。

資本蓄積が妨げられ、それが供給力を低下させる。

実際、米国の労働力人口は2月時点の1億6,455万人から4月に1億5,648万人と2か月間で4.9%減少した。

その後、5月、6月とやや増加し、6月には1億5,993万人に増加したが、
なお前年同月を2%程度下回る水準だ。感染を恐れて、この先も人々が働きにでることをためらい、
労働参入が増えなければ、経済全体としても供給力は高まらない。

そもそも、ここまで実施されている大規模な財政・金融面での対策も、
落ち込んだ需要を押し上げるための需要喚起策ではなく、
企業の資金繰り対策や失業対策に重点が置かれている。

つまり、供給力低下に歯止めをかけるためのものが中心だ。

感染が落ち着けば需要はある程度戻るだろうが、
いったん企業倒産や長期の失業増加で経済の供給力を損なわれれば、簡単に元に戻らない。

対策はそうした点に配慮したものにほかならない。

エネルギー価格はすでに供給減少を反映して上昇している。

原油WTI価格は需要の大幅な落ち込みにより一時マイナスとなったが、
今や40ドル/バレルまで反発している。

サウジアラビア、ロシアなどOPECプラスの協調減産が主因だが、
米シェールオイル企業の破綻などにより米国の原油生産量が予想以上に大きく落ち込んだことも一因だ(図1参照)。

長期的にはエネルギー開発などへの投資不足が供給力を低下させる要因になっている。

IEAによれば、世界のエネルギー関連投資は2017年から19年にかけて
年間1.9兆ドル程度のペースで推移してきたが、20年は1兆5,200億ドルと約2割落ち込む見通しだ。

投資削減は長い目で見るとエネルギー供給力を減少させ、将来のエネルギー需給をひっ迫させる。
 

●グローバル化の反転によりコストが増加
 
次にコスト増加によるインフレ、いわゆる「コストプッシュインフレ」のおそれはないのか。

まず、グローバル化の反転がコストを増加させる。

これまで、経済のグローバル化は、
(1)サプライチェーンなどを利用した国際分業による世界的な供給力増大と生産効率の高まり、
(2)貿易障壁の削減による国内市場の価格競争促進、という形で、先進国の物価上昇を抑制してきた。

しかし、今回のコロナショックでグローバル化にブレーキがかかれば、
安い輸入品が物価上昇を抑えるということもなくなる。

特に、医療品、食料品など広い意味での安全保障確保に必要なものは、
高コストでも国内で生産するか、そうでなければ、万一の場合に備えて、
これまで以上の国内在庫を保有する必要がある。

また、感染予防のためのコスト(例えば、飲食店での消毒、PCR検査、検疫強化など)なども大きい。

そうしたコストは企業が負担することになれば企業の利益が圧迫されるが、
最終製品価格に転嫁され、物価上昇という形で個人が負担しなければならなくなる可能性がある。

財務省・法人企業統計によれば、
1~3月の売上高は季調済み前期比1.9%増と消費税率引き上げの影響で落ち込んだ
10~12月の反動もあって増加したが、経常利益は同11.6%減少した。

売上増加にもかかわらず、利益が減少したのは、コストが増えたからにほかならない。

1~3月のコスト増加がすべてコロナショックによるものかどうかは不明だが、
安価な輸入品に依存していたものを割高な国内生産に切り替えざるをえなくなったことや
感染予防などのためのコスト増などがコスト増加につながった可能性はある。

1~3月はコスト増加分が企業の利益減少につながったが、もし利益が減少しないように、
企業がこのコスト増加分を売上に価格転嫁していたとすれば、
売上単価を0.8%引き上げていなければいけなかった計算になる。

つまり、1~3月のコスト増加は物価を最大0.8%ポイント上昇させるものであった。
 

●財政ファイナンスが続けば通貨に対する信用失墜のおそれも
 
最後に、今回のコロナショックが通貨価値の低下という形でのインフレ、
いわゆる「ハイパーインフレ」につながるおそれはないのか。

各国中央銀行は企業倒産防止や失業対策などで膨大に膨れ上がる財政需要を賄うべく、
緊急避難的に財政赤字のファイナンスを行っている。

日銀や米FRBは無制限の国債買い入れ姿勢を表明している。

確かに、現在のような感染の第二、第三波が懸念されるような状況では、
早すぎる緊縮政策への転換は景気の二番底を招くおそれがあるが、
半面、中央銀行が財政赤字をファイナンスし続ければ、政府は財政節度を守ろうとしなくなるだろう。

政府やその政策、ひいては通貨に対する信頼度が低下し、
それが期待インフレ率を徐々に高める可能性がある。

特に、日本のようにすでに巨額な財政赤字を抱える国で赤字が恒常化すれば、
赤字が問題視される可能性が高い。

今回のように、当初は一時的あるいは緊急避難的な措置であると考えられていても、
いったん始めたことをやめるのは難しい場合がある。

1932年12月に犬養内閣の蔵相となった高橋是清が主導した
財政ファイナンス(日銀引き受け)がまさにその典型的な例だ。

髙橋蔵相による日銀引き受けは、
1929年の米国株暴落を契機に起きた世界恐慌(日本で言えば昭和恐慌)のさなか、
イギリスの金本位制離脱(1931年9月)、満州事変勃発(同年9月)、
井上準之助暗殺(1932年2月)、5.15事件(犬養首相暗殺、1932年5月)など
不安な世情のなかで、日本経済をいち早く立ち直らせた政策だったといわれる 。

しかし、この財政ファイナンスによって政府は財政資金調達についての日銀依存を強め、
日銀も政治的な圧力や市場の動揺に配慮して、一時的な政策であったはずの
財政ファイナンスをやめることができなかった。

日銀引き受けは一種の制度として永続してしまい、結果として、政治的には軍事費の拡大を容認し、
経済的には通貨価値の急落を伴う急速なインフレを招くことになった(図2参照)。

もちろん、中央銀行の政治的な独立性が十分保たれていれば、こうしたことが起こる懸念は少ない。

だが、今の状況はそうした懸念を高めている。

コロナショックは「有事」であり、それに対してあらゆる手段を尽くした対策が必要であるとされ、
しかも、MMT(現代貨幣理論) のような財政ファイナンスを正当化する理論も出てきている。

歴史が繰り返される可能性があるだろう。

確かに、感染の第二・第三波が到来した場合、
再度の都市封鎖などによって個人向けサービスなど需要が大幅に減少し、
それらの物価が再度、一段安となるおそれがある。

しかし、コロナショックは必ずしも需要面だけに影響するわけではなく、
供給面やコスト面などにも影響し、政策の信頼度低下による期待インフレ率の上昇も懸念される。

長期的にみるとインフレ率は徐々に上向いていく可能性が高いのではないか。

FOMCでは「インフレ率が目標の2%に達するか、
もしくは小幅に上回るまで低金利を維持すると約束する案を多くの参加者が支持」したとされるが、
高失業率のなかでインフレ率が2%を上回って上昇する時期は意外に早いのではないかと思われる。
 
 
以上
 
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