元チーフディーラー集団(柾木 利彦、西原 宏一、伊藤 寿彦、竹内 のりひろ)+各分野一流の執筆陣の相場記事

×

メディア

無料メルマガ

無料講座

おすすめ商品

おすすめ会社

FXプライムbyGMO

スパンモデル標準搭載

FXコラム

2017.11.27

先進国の財政スタンスが「緊縮」から「拡張」に転換

著者:古金 義洋


●緊縮気味だった先進国の財政政策は2016年頃から拡張気味に転換し始めている

トランプ政権の大規模減税が経済や金融市場にどういう影響を及ぼすのかが注目されている。

ただ、すでに、先進国各国の財政政策スタンスは
「緊縮」から「拡張」へと舵を切り始めている点に注意しなければならない。

IMF「世界経済見通し」によれば、
先進国の「構造的財政赤字」はリーマンショックに対応した財政面からの景気刺激策の影響で、
2008年以降急拡大し、2010年にGDP比6.5%まで赤字幅が拡大した(図1参照)。

構造的財政赤字というのは景気変動の影響を除いた財政赤字のこと。

通常、景気が良い時期は税収増などにより財政赤字は減り、
逆に景気が悪い時期が赤字が増える。

構造的財政赤字は、こうした景気変動の影響で自然に変化する分ではなく、
政府が減税や公共投資など裁量的な政策を発動することで変化する分の赤字だ。

2010年にかけて構造的財政赤字幅が拡大したのは、
景気悪化に対応した裁量的な減税や歳出拡大策の結果によるものだった。

そして、この膨れ上がった赤字を削減するため、
2015年頃にかけて、増税や歳出抑制策など緊縮財政政策が進められた。

この結果、2015年の同赤字幅は同2.4%に縮小した。

だが、2016年以降、赤字幅縮小に歯止めがかかっている様子が窺われる。

IMFによれば、同赤字幅は15年の2.4%から、16年2.5%、17年2.8%と拡大する見込みだ。

構造的財政赤字の変化は、政府の裁量的政策の動き、
すなわち財政政策スタンスの変化を示す。

先進国の財政政策スタンスは、2009年から2015年にかけては緊縮気味で、
それが景気を抑制する効果があった。

しかし、2016年以降の財政政策スタンスは拡張に転じ、
景気を刺激する効果を持ちつつあることがわかる。

図2は、各地域の構造的財政赤字(GDP比)の変化幅から、
財政政策スタンスが景気をどの程度抑制する効果があったのか、
あるいはどの程度刺激する効果があったのかをみたものだ。

米国の財政政策スタンスは2015年まで緊縮的で景気抑制効果を持っていたが、
16年には景気刺激型に転換した。

財政面からでの景気刺激策は、
16年の米国のGDPを約0.6%押し上げる効果があったとみられ、
続く17年も約0.3%押し上げる効果があるとみられる。

世界のなかで米国の景気拡大が先行しているのは、
こうした財政政策の影響もあると考えられる。

日本では、2014年の消費税率引き上げの景気抑制効果が大きかったが、
その後の財政政策は徐々に緊縮的ではなくなりつつある。

安倍政権も、当初、2020年に基礎的財政収支(国債利払いを除いた財政赤字)を
黒字化するという目標を掲げていたが、
今やほとんどその目標を断念しているかのようにもみえる。

実際、日本の2017年の財政政策は拡張気味に転換しており、
それは日本のGDPを0.1%とわずかに押し上げる効果があるとみられる。

ユーロ圏も全体としては2016年まで緊縮気味だったが、
17年にはわずかながら拡張気味に転じつつある。

過度な財政緊縮策をとっているとの国際的な批判が強まるドイツの財政黒字が
縮小しているほか、ユーロ圏全体で難民増加などに対応した財政支出も増大しており、
赤字幅が拡大しつつある。

ユーロ圏の同赤字の動きを国別にみると、
財政スタンスが緊縮から拡張に転じた時期は幾分違いがあることもわかる。

スペインが2015年から、イタリアが2016年から、ドイツが2017年から、
それぞれ拡張的な財政政策に転換した。

ユーロ圏のなかでもスペインの景気が早くから好調に推移したのは、
こうした財政政策スタンス転換の影響もあると考えられる。

スペインの構造的財政赤字は2009年にGDP比10.6%に拡大したあと、
14年には1.9%に縮小したが、15年に2.3%、16年に3.0%と再拡大している。

このように、先進国の財政政策スタンスは緊縮から拡張に転じつつあるわけだが、
2018年以降は、これに米トランプ政権の減税が加わる。

先進国全体として、政策スタンスの転換は明らかになる。

●GDPギャップはほぼゼロで、現在の経済状況からすると拡張政策は「誤り」

問題は、現在の世界の経済の状況が、
そうした財政政策スタンスの転換を正当化できるかどうかという点だ。

図3は、先進国のGDPギャップ(IMFの推計)の動きをみたもの。

先進国全体のGDPギャップは2017年がマイナス0.2%とゼロに近づき、
2018年にはプラス0.1%とプラスに転ずる見込みだ。

これまで潜在GDPに比較して実際のGDPは小さめで、多少の余裕があった。

しかし、現在は経済はフル稼働状態で、ほとんど余裕はない。

2018年の景気はどちらかと言えば過熱気味になる見込みだ。

経済環境から言えば、これまでの財政政策は拡張的であっても良かったが、
これからは緊縮的に転換していくのが理想だ。

現実はそれと反対の方向に進みつつあるわけで、
誤った方向に政策が向かっていくことになる。

誤った政策の結果として、実体経済はどうなるか。

財政拡張政策の効果は小さく、むしろ悪影響が大きくなるおそれがある。

財政拡張政策による追加需要が加わったとしても、経済はフル稼働状態で余裕はない。

人手不足などで追加供給力が小さいため、実際の生産活動(GDP)はさほど高まらない。

場合によっては、景気過熱でインフレ率が予想以上に高まっていく可能性もある。

また、誤った政策のひずみは金融市場にも向かう。

民間の資金需要に加えて国債追加発行が増加することによる、
いわゆる「クラウディング・アウト」の懸念が台頭することで、
長期金利は予想以上に上昇していくおそれがある。

長期金利が予想以上に上昇していけば、
それは株式市場にも悪影響を及ぼすことになるだろう。

以上

 

本記事は、新イーグルフライから抜粋したものです。

古金 義洋

>> 著者ページはこちら

新着情報

メディア情報

無料メルマガ

無料講座

おすすめ商品

FXプライムbyGMO FXプライムbyGMO

おすすめ会社

スパンモデル標準搭載

トップに戻る