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FXコラム

2018.01.29

「3%賃上げ」は実現するのか?

著者:古金 義洋


●正規労働者の賃金はほとんど上昇していない

好調景気が続き企業収益が過去最高水準に高まっていることに加え、
労働需給も逼迫していることから、
今年の春闘では3%の賃上げが期待されている。

過去数年にわたって賃上げの期待が裏切られているが、
今年は本当に賃上げが実現するのか。

まず、足もとの労働市場の動きをみてみよう。

確かに、労働需給は逼迫しており、
ハローワークでの求人・求職の比率である有効求人倍率は1.56倍(11月)と
1990年バブル期のピーク(1.44倍)を大きく上回っている。

ただ、労働需給が逼迫しているのは
パートタイム労働者などの非正規労働者が中心だ。

パートタイム労働者の有効求人倍率は1.8倍を超えている。

反面、パートタイム労働者を除く
一般労働者(いわゆる正規労働者のほか常勤の派遣社員など)の
有効求人倍率は1.3倍程度で、さほど高くない。

パートタイム労働者の時給は平均で約1,110円だが、
一般労働者の時給は平均1,960円と倍近い格差がある。

同じ条件であれば、企業としては
割安なパートタイム労働者を採用したがるのは当然だろう。

労働需給が逼迫しているパートタイム労働者の賃金は実際に上昇しており、
11月時点でのパートタイム労働者の所定内給与は、
前年比2.0%上昇していた。(図1参照)


これに対して、
労働需給がさほど逼迫していない一般労働者の所定内給与は同0.2%上昇にとどまる。

期待されている春闘での「3%賃上げ」というのは、
年齢が増えるごとに増加する分である定期昇給(定昇)分を含んだ数値であり、
言うまでもなく、
年功序列の賃金体系にある正規労働者が対象となる。

定期昇給を含む賃上げの実績は15年度が2.4%、
16、17年度が2.1%だった。

これに対して、
定昇分を除く所定内給与の上昇率は15年度が0.4%、
16年度が0.2%だった。

差引き、約2%ポイントが定期昇給分だということがわかる。

「3%賃上げ」は定期昇給分を除くと1%に相当するが、
現在の一般労働者の賃金上昇の状況(前年比0.2%上昇)から言えば、
定期昇給分(約2%)を含めても、3%にはほど遠い。

0.2%+2.0%だとすると、
賃上げ率は2.2%程度になり、
16、17年度とほぼ同水準になる計算だ。

「3%賃上げ」は、
現在の正規労働者の賃金の動きから言って非現実的な数字だ。

●賃金上昇率は労働生産性上昇率に見合って低下している

では、「景気が良好で企業が高収益をあげているから、
労働者にも適切な分配があって良いはず」という理屈は間違っているのか。


図2は、
名目GDPに対する雇用者報酬(1人当たり賃金×雇用者数)の比率、
いわゆる労働分配率の動きをみたものだ。

企業収益の変化に比べて賃金の動きが安定しているため、
労働分配率は景気が悪い時期に上昇し、
景気が良い時期は低下するのが普通だ。

同数値の1980年代以降の下限は48.7%(2004年)、
上限は52.1%(1984年)で、ほぼボックス圏で推移している。

足元、2016年は50.0%、2017年(一部推計)は50.6%と
上下限のちょうど中心値であり、
高すぎるわけでも低すぎるわけでもない。

生産活動の成果については、
労働者にも適切に分配されていると言ってもいい。

通常、労働生産性上昇率と実質賃金上昇率が同じであれば
労働分配率は一定になる。

労働生産性が実質賃金上昇率を上回れば労働分配率は低下し、
逆に実質賃金上昇率が労働生産性を上回ると労働分配率は上昇する、
という関係がある。


図3は景気変動などの要因を除くために10年間の長期で、
実質賃金上昇率と労働生産性上昇率を比べたものだ。

2006~2016年の10年間の労働生産性上昇率は年率0.9%だったが、
実質賃金上昇率は同1.0%で、
両者の数値にほとんど違いはなかった。

2007~2017年は、労働生産性上昇率が幾分低下し0.8%となる一方、
実質賃金上昇率は1.0%のままで、
労働者への配分が増えていることを示す。

実質賃金上昇率は1980年代以降、鈍化傾向を辿っているが、
これは労働生産性上昇率の鈍化と見合ったものだ。

ほぼ適切な水準にある労働分配率を変えずに
実質賃金を増やそうとするのであれば、
労働生産性上昇率の伸びを引き上げなければいけない。

そうした点を考慮したうえで、
現在は大幅な実質賃金上昇が許される状況にあるのか。

足元の景気は良好だが、残念ながら労働生産性は上昇するどころか、
逆に低下している。

雇用者数が前年比2.7%(16年11月)増加しているのに、
実質GDPは前年比2.1%(16年7~9月)しか増加していないためだ。

仮に、多少のゲタをはかせて現在の労働生産性上昇率をゼロとしても、
実質賃金が増やせる状況ではない。

消費者物価は石油製品と生鮮食品の値上がりで上昇しているが、
エネルギーと生鮮食品を除く、
いわゆるコア・コアの消費者物価上昇率は12月時点で前年比0.3%だ。

この程度が今のインフレ率の実勢と言える。

実質賃金上昇率がゼロだとして
この物価上昇率0.3%を足した名目賃金上昇率は0.3%となる。

定期昇給分の2%を足しても2.3%にしかならない。

「3%賃上げ」は景気拡大や企業の高収益などを考慮しても、
やや無理のある数値だろう。

例年通り、おそらく期待は実現しないであろうし、
経済成長の持続性から言えば、
16、17年度並み(2.1%)の賃上げの方が望ましい。

賃上げによる消費増加による景気拡大を期待する向きもあるが、
高すぎる賃上げ率はむしろ企業収益を圧迫し、
実体経済や株式市場に悪影響を及ぼすおそれもある。

どうしても大幅な賃上げを望むのであれば、
労働生産性を高めていく必要があるが、
低付加価値で労働集約的な観光産業に資源を集中して
観光立国を目指そうという政策などは、
言うまでもなく、賃上げに逆行する。

 

以上

 

本記事は、新イーグルフライから抜粋したものです。

古金 義洋

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