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FXコラム

2018.06.04

イタリア発の市場動揺は今後も続く

著者:古金 義洋


●イタリアではなお「ユーロ離脱の是非」を問う再選挙実施の公算も

イタリアなど南欧諸国の政局不安が、
単一通貨ユーロを崩壊させるのではないかとの懸念が高まり、
世界の市場が動揺している。

イタリアでは、結局、
政治経験のない法学教授のジュゼッペ・コンテ首相の下で、

反エスタブリッシュメント政党の「五つ星運動」と、
反移民政党の「同盟」が連立を組むことになった。

「五つ星運動は」左寄りで、リベラル色が強く、
低所得層に配慮したベーシック・インカムを、

一方、「同盟」は保守的で、
富裕層の税負担軽減につながるフラット・タックスを看板に掲げる。

志向は正反対だが、
どちらも大衆迎合型の拡張・ばらまき型の財政政策運営を指示しており、
財政規律重視を志向するEU側との対立は必至だ。

EU協調派で閣僚任命権を持つマッタレッラ大統領は、
反EU派の閣僚を拒否したため、
組閣が危ぶまれていたが、

今回、財務相に反EU志向が目立たない、
エコノミストのジョバンニ・トリア氏が就くことで、
なんとか組閣ができた。

同大統領が財務相として拒否したユーロ懐疑派のエコノミスト、
パオロ・サボナ氏は欧州問題担当相となった。

イタリアがユーロに対し懐疑的になるのも不思議なことではない。
そもそも、単一通貨ユーロには、


域内の労働力移動がスムーズでないため単一通貨になじまず

(ノーベル経済学賞を受賞したマンデル氏によれば、
域内に生じた経済格差を労働力の移動によって円滑に調整されることが、
単一通貨圏としてふさわしい条件としているが、

ユーロ圏内の各国は言語や文化が異なるため、
労働力の移動がスムーズでない)、


金融政策が1つであるのに財政政策が1つでない、
という構造的な欠陥がある。

そのため、ドイツなどに比べ賃金コストなどの面で
競争力の弱いイタリアは景気低迷が続きやすい。

EU側は欧州債務危機後もユーロの構造的欠陥を是正する努力を怠ったため、
EU内での不均衡は拡大しており(図1参照)、

ユーロからの離脱を求める政治的な圧力が強まるのも自然だった。

今回の連立内閣樹立で、
「ユーロ離脱の是非」を問う再総選挙を当面回避することができたが、
ユーロ圏内でイタリア経済のパフォーマンスは見劣りしている。

緊縮財政の見直しで景気を立て直したいとする新政権と、
財政緊縮策を維持すべきと考えるEU側との衝突は避けられない。

再選挙の思惑は払しょくできず、
イタリア発の市場の動揺はこの先も続くおそれがある。

●2009~12年の欧州債務危機は、
欧州だけでなく世界経済にも多大な悪影響を及ぼした

2009~12年の欧州債務危機を思い出させる事態になっているわけだが、
当時、どういうことが起こったのかを振り返ってみよう。

欧州債務危機は2009年10月のギリシャの政権交代を機に、
同国が財政赤字を少なくごまかしていたことが明るみにでたことで始まった。

このため当初はユーロ圏のなかでも小国である
ギリシャの財政の問題にすぎなかった。

しかし、問題が長期化、深刻化していくにつれ、
単に、財政赤字の問題ではなく、
財政赤字と銀行不良債権の複合的な問題だとされ、
さらには、単一通貨ユーロの構造的な問題との見方にもなった。

また、こうして焦点が広がっていくにつれて、
ギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどに飛び火した。

問題は欧州だけにとどまらず、
米国でも2011年8月には米国国債の格下げをきっかけに株価が急落した。
これは、投資家の「財政」への不安が高まっていたからだろう。

この欧州債務危機により、
ユーロ圏の景気は大きく悪化した。

実質GDP成長率(前年同期比)は、
2011年1~3月の2.9%から12年1~3月にはマイナス0.5%とマイナスに転じ、
マイナス幅は13年1~3月までに1.2%にまで拡大した。

世界経済も少なからず影響を受けた。

米国の成長率は、
2010年7~9月の前年比3.1%から13年4~6月に1.0%へと減速した。

中国でも成長率は、
2010年1~3月の前年比12.2%から12年7~9月に7.5%へと減速した。

日本の成長率は、
2010年7~9月の前年比5.7%から11年の震災の影響もあって、
11年に一時マイナス成長となったあと、

12年には一時持ち直したが、
12年7~9月に再びマイナス0.1%と落ち込んだ。

日本では、
公式に2012年4月~同年11月が景気後退局面だったとされるが、
震災のほか、欧州債務危機の影響が大きかったと考えられる。

●欧州債務危機では3つのフェーズがあり、
市場の焦点が少しずつ変わっていった

危機は長期にわたって続いたわけだが、
いくつかのフェーズ(山)があったことがわかる(図2参照)。

第1フェーズはギリシャの財政危機に端を発し、
財政赤字問題が広がっていった局面だ。

2009年10月にギリシャの財政赤字ごまかしが発覚した。

ギリシャにとって、
おそらく債務返済が不可能であるとの見方が強まり、
10年4月にかけてギリシャ国債利回りが二ケタ台に急上昇していった。

ギリシャはデフォルト危機に際し、
EU、IMFなどから支援を受けた(第1次ギリシャ支援は10年5月)。

ただ、リーマン危機後に財政赤字が増大したのは、
ギリシャだけではなく、ユーロ圏各国も同様だった。

ポルトガルでは財政再建に取り組もうとしたが、
政治的な反対が大きく、失敗した。

格付け会社による格下げにより、ギリシャ同様、
財政赤字幅の大きかったアイルランドや、
ポルトガルの国債利回りが上昇し、
資金調達が困難になった。

結局、ギリシャに続き、
アイルランドが10年11月に、ポルトガルが11年5月に、
EU、IMFからの支援を受けることになった。

ただ、この局面では、
欧州債務危機は一部の地域の限定的な問題だった。

ユーロ圏経済全体への影響も、まだ少なく、
実際、ECBはなおインフレ重視姿勢を変えず、
利上げを行っていた
(政策金利は2011年4月1.0→1.25%、同年7月1.25%→1.5%)。

第2フェーズは、
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルからスペイン、
イタリアなどユーロ圏の中核国へ危機が広がっていった局面だ。

EUは、11年10月にギリシャ国債の50%カット、
欧州銀行の資本増強などの対策を打ち出したが、
危機は広がり、同年11月に、スペイン、
イタリアの国債利回りが危機ラインとされる7%近くまで上昇した。

スペインやイタリアはギリシャなどと違い、
もともと債務返済が困難な国ではなかったが、
国債利回り上昇(→利払い費急増)による財政破綻が意識され始めた。

11年11月にECB新総裁に就任したドラギ氏は、当初

「ECBが政府への最後の貸し手となることはECBに付託された権能ではない」

と述べていた。

この発言で、ユーロ圏には「最後の貸し手」が存在せず、
スペイン、イタリアの国債利回り上昇が放置されるのではないかとの不安も高まった。

ただ、ECBドラギ新総裁は金融緩和に向けて思い切って舵を切った。

11年7月に1.5%に引き上げられていた政策金利は、

1.25%(11年11月)→1.0%(同12月)→0.75%(12年6月)
→0.5%(13年4月)→0.25%(同11月)と引き下げられていった。

また、量的金融緩和策として、
11年12月、12年2月と2度の長期資金供給オペ(LTRO)が実施された。

金利面、量的面からの金融緩和がスペイン、
イタリアなどの国債利回りを低下させ、
危機は小康状態となった。

第3フェーズは、
ギリシャの再選挙(12年6月)を契機として、
ギリシャのユーロ離脱懸念が高まっていった局面だ。

ギリシャは2010年5月、
12年3月とEU、IMFからの支援を受け、
財政緊縮政策を続けたが、

国内は緊縮疲れの状態となり、
政治的に緊縮政策を続けることが難しくなった。

12年6月の総選挙は
「緊縮策継続かユーロ離脱か」を
国民に問う選挙になり、市場は再び動揺した。

前述した通り、
単一通貨ユーロにはもともと構造的な欠陥がある。
そうした欠陥を突かれ、ユーロ分裂・崩壊の懸念が高まった。

一方、同年6月には、
不動産バブル崩壊で危機に陥っていたスペインの銀行救済が必要となり、
EUが救済措置に動かざるをえなくなった。

そうしたなかで、スペイン、イタリアの国債利回りは再び7%程度に上昇したが、
ギリシャの総選挙で財政緊縮派が勝利し、

さらに、ECBドラギ総裁の
「やれることは何でもやる」(12年7月)
との発言をきっかけに危機は徐々に沈静化していった。

●ユーロの構造的欠陥を嫌気し
イタリア国民が離脱を選択することにはECBも無力

このように、欧州債務危機は、
ギリシャの財政赤字問題が直接的な危機のきっかけになったが、

その後、「最後の貸し手」問題や、
単一通貨ユーロの構造的欠陥の問題が焦点になり、
危機的な状態が深刻化していったことがわかる。

現在、欧州各国の財政赤字は縮小し、
景気拡大により不良債権も減っている。

また、ECBドラギ総裁の「やれることは何でもやる」との発言や
その後の金融政策運営でのハト派的なスタンスによって、

「ECBは政府への最後の貸し手」にはなれないとしても、
金融システムの安定のために、
流動性不足に対応した
「最後の貸し手」に近い存在になりうることが証明された。

だが、その一方で、
単一通貨ユーロの構造的欠陥に関して言えば、
ほとんど手をつけられていない。

このままでは、賃金コストなどの面で競争力の弱いイタリアが、
いつまでも競争力の強いドイツなどに比べて
景気拡大の恩恵を受けられない状態が続き、
国内政治がもたなくなるのは自然なことだ。

「緊縮策継続かユーロ離脱か」を問う12年6月のギリシャ総選挙では、
ギリシャ国民は仕方なく緊縮政策継続を選択した。

しかし、2016年にイギリス国民がEU離脱を選択したように、
今後、実施されるかもしれないイタリア総選挙では、
どういう結果になるかはわからない。

ユーロ離脱とその後の経済混乱を懸念する国民の票が、
五つ星運動や同盟から穏健派の政党に流れることを期待する向きもあろうが、
確信は持てない。

ECBは最後の貸し手として、
イタリア国債利回りの上昇がイタリアの財政破綻につながることに対して、
歯止めをかけることができる。

しかし、イタリア国民が単一通貨ユーロの構造的欠陥を嫌気して、
選挙でEU離脱を選択する可能性はゼロではなく、
そうした国民の選択に対してECBが無力であるというのも事実だ。

ユーロ相場もいったん反発したが、下げ止まったとは言えまい。

以上

※この記事は新イーグルフライから抜粋したものです

古金 義洋

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