月別アーカイブ: 2018年2月

第38回 「失踪」

週初(19日)は中国や香港などが春節、そしてアメリカがプレジデント・デーということもあって、内外共にドル円は106円台で模様眺めの展開となった。

相場が動き出したのは、翌日のロンドン時間のことである。

安倍首相が「消費増税前の駆け込みとその反動減を懸念し、経済の下振れをコントロールする必要性」を主張したことが切っ掛けとなった。

市場に財政出動期待が浮上し、それがニューヨーク市場を煽り、円売り(ドル買い)に繋がった。

先週作った105円台のドルロングも奏功し、木村に送った予測も的中している。

水曜(21日)の東京では、日経平均が上昇するのに連れてドル円も107円90銭まで上昇した。

だが、期末を控えて実需筋や機関投資家が108円を一つの節目と見出した。
年初からの抵抗線も108円辺りまで下降している。
当然の如く、彼等や投機筋ドル売りが湧いて出た。

‘やはりここは上値が重たいな’

「山下、どう思う?」

「はい、東京はもう一杯でしょうか。
あとは海外がもう一回上値を試すかどうかでしょうか?

課長のコストは悪くないので、一晩だけ待ってても良いかとは思いますが・・・」

「そうか。
今、返す刀でショートを振るってアイディアはどうだ?

まだシカゴ*の円ショート(円売り持ち)は大分残ってるな。
沖田の話じゃ、少しずつ手仕舞ってる(円を買い戻してる)様だが、彼等にも焦りがあるはずだ。

やはり、売るか。
俺は50本、シング経由で売る。
お前は50本、EBSで売ってくれ」

「81で50本、80で20本」

「了解、こっちは80で全部。
50本は5円台の利食いで処理しといてくれ。
後は放っておく。

お前も20本売ったのか?
一応、8円が抜けたらストップを入れおいた方が良いな。

もう少し頑張るなら、8円60(108円60銭)takenでも良いけど」
8円60はテクニカル上の重要ポイントだ。
当然、そのことは山下も分かっている。

「いえ、8円丁度takenで入れておきます」

「もう期末の収益はあまりブラせないから、それが良い。
そうだな、そろそろ皆にもそれを徹底しておく時期か。

山下、明朝のミーティングでそのことを皆に伝える。
俺が言い忘れたら、その時はリマインドしてくれ」

「はい」

 

週後半(22日)になると、案の定ドルの上値が重たくなり出した。

ニューヨークの沖田の話では毎日昼近くになるとコンスタントにシカゴの売りが出てくるという。

前日に公表された1月のFOMC議事録はタカ派的な内容だったが、市場はむしろ地区連銀総裁のハト派的な発言に反応しやすくなっている。

この日に飛び出たブラード・セントルイス連銀総裁の「速過ぎる利上げペースは経済成長を阻害する」という発言が週末に向けての相場を決定づけた。

今年のFOMCでは3回の利上げが市場のコンセンサスだったが、それが2回という声も出始めている。

経済政策の波及経路のことも全く分からずに「低金利政策が良い」と言い続けているトランプ、そして立場も弁えずに「ドル安はいいことだ」と言い放った財務長官ムニューシン、そんな政権下でFRB新議長に就任したパウエルもややハト派的と言われる。

‘金利相場がまだ続きそうだな’

ブラード発言で長期金利が低下し、俄かロングの投げでドル円は週末に106円台半ばへと下落した。

 

土曜日は社宅から出ずに、終日片づけに徹した。
週に一度は横浜に住む母親が掃除をしに来てくれるが、デスクや書棚の整理には手を付けない。

夜の8時過ぎ、宅配ピザが届いた。

岬の言いつけである「野菜不足に注意」を守り、キャベツ、トマト、レタスそれにキューリを適当に切って粉引の中鉢に入れた。

7寸の中鉢は粉引で人気の高いらしい花岡隆の作だという。
岬からのクリスマス・プレゼントである。
磁器ものが本来好きだが、これを見ると陶器も悪くないと思う。

野菜に塩をふり、バージン・オリーブオイルをたっぷりとかけた。
その上からパルメザン・チーズを振る。
悪くはない味だ。

冷蔵庫から母親が買っておいてくれたビールのロング缶を取り出す。
すべてをPCの置いてあるデスクへと運ぶ。

Miles Davisの ‘Kind of Blue’をBose の Music System に差し込む。
So whatが流れ出した。
少し重いが、Miles の巧みなトランペットのせいか気にはならない。

ビール、サラダ、ピザの順番を繰り返しながら、腹を満たしていく。
PCのトップ画面のヘッドラインは冬季五輪のニュースだらけだ。
‘つまらないな’と思いつつ、Outlookをクリックした。
国際金融新聞の木村に来週の相場予測を送るためである。

 

木村様

まだ僕の予測、当り続けてる様ですね。

もっとも、ここからは少し難しい局面を迎える様な気がします。
恐らくは揉み合いかと。

現状が年初からの安値圏なので、ここで上下動が激しければ、‘ドル下げ一相場’は終焉するかもしれません。

ただ、本邦輸出企業が決算を迎えるこの時期、海外からの利益・配当の還流(外貨売り・円買い)も考慮すると、需給は緩い様な気がします。

FEDの年内利上げ4~5回説まである様ですが、減税の波及効果が余程前倒しで顕在化しないと無理なので、‘為にする’エコノミストや自称ストラテジストの話に過ぎないでしょう。

それはそれとして、予測ですが、一応「ドルに下方リスクが残るなか、揉み合う展開」程度でまとめて置いて下さい。

シカゴ筋の円売り越し・手仕舞いの加速には注意しておいた方が良いかもしれません。

予測レンジ:104円50銭~108円50銭

有体な予測で申し訳ありません。

IBT国際金融本部外国為替課長 仙崎了

 

メール出し終えたところで、スマホが鳴った。
山下からである。

「めずらしいな、土曜日のこんな時間に。
どうした?」

「了さん、少し拙いことが起きました。
家内曰く、岬君、いえ岬さんが消えてしまったと言うんです」
山下はプライベートの時間で’俺を課長’とは呼ばない。

「どういうことだ?」

「はい、岬さんのお母さんから家内に電話があり、昨日の昼過ぎにご主人が突然店に現れたということです。

お母さんが‘岬は今、金沢美術工芸大の聴講で出かけています’と伝えると、‘これを岬に渡してくれ’と言い残し、直ぐに店を出て行ったそうです。

そして岬さんが戻ってきたところで、お母さんは坂本さんが来たことを伝え、封筒を渡したそうですが、その中身を見た途端、飛び出す様に店を出てってしまい、それから戻らない。
ざっとそんな話ですが・・・」

「それはまずいな。
それで奥さんは岬に電話をしてくれたのか?」

「それがお母さんの話によると、スマホも部屋に置かれたままだそうです。
相当動揺してた様ですから」

「分かった。
今日はもうアルコールを入れてしまったので、運転はできない。
明日、レンタカーを借りて松本に行ってくる。

多分、月曜は銀行に行けないな。
デスクは任せたぞ。

東城さんに話しておいてくれ。
彼には全部話しても構わない」

「了解です。
明日、お気を付けて。
失礼します」

 

‘少し頭を冷やさなければならない’
ラフロイグをグラスに注ぐと、’A Windham Hill’の’Christmas’をMusic Systemに挿入し、[The First Noel]のトラックをrepeat 設定にした。

シーズン外れだが、頭を冷やして物事を考えたいときには最高のトラックだ。
泣ける曲だが、岬の気持ちを考えるのには良い。

ラフロイグを数杯呷ると、脳中枢が刺激された。
The first Noelのメロディーが懐かしい雪山の小屋の光景へと誘う。
もう彼女が向かうのはあそこしかない。

 

(つづく)

 

注:
*シカゴ:IMM(International Monetary Market)、シカゴにある先物市場(CME)の通貨部門。

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第37回 「途絶えた連絡」

―――財務省に依頼された勉強会は無事終了した。

勉強会とは名ばかりで、実際には局長クラスを中心とした講演会的なものだった。

大学の後輩である吉住の話では、会の前日になって急遽、坂本が部屋の変更を伝えてきたという。

吉住は局長クラスが出席することも知らされてなかったとのことだ。

俺が当日になってお歴々を目の前にすれば、たじろぐとでも思っての企みだったのである。

だが、俺は慌てることもなくテーマを変更せずに事前に用意した『行動経済学と為替相場』についての話をした。

抽象的なテーマだが、内容が市場心理を追及したものだっただけに、参加者全員を話に引き込めた様である。

話の内容に納得する声が漏れ聞こえたことや閉会後の拍手が、スピーチが成功だったことを物語った。

逆にそのことは坂本を苛立たせ、そして妻のかつての恋人だった俺への嫉妬を募らせた様だった。

勉強会の後に俺を呼び止めた彼は、「これから先、何が起きるか楽しみにしておけ」と捨て台詞を残して自局のある建物へと消えて行った―――

 

週初(12日)の東京市場は建国記念日の振り替え休日で休場となった。

東京市場が休場の日は余程の事が起きないと、アジアの時間帯は静かである。

この日も同様で、ドル円は108円台後半、ユーロドルは1.22台での模様眺めの展開に終始した。

だが、翌日には再び幅広い通貨に対してドルが売られ出した。

特にドル円は黒田日銀総裁が「低金利の銀行収益への影響」に言及したことで、下方モメンタムが付いてしまった。

本邦要人から急速に進む円高に対する牽制発言も出たが、市場はそれらを無視してドル円を売り込んだ。

昨年のドル円最安値107円32銭を割り込むと、ストップロスを巻き込む格好で一挙に106円台へと突っ込んだ。

週末(16日)の東京では、午後に入り、ドル円は1年3か月ぶりの水準となる105円台半ばまで急降下した。

そんな折、東城からの電話が入った。

「どうだ?」
当然、市場のことである。

「はい、これ以上は無理だと思います。

実需筋がドルを売り始めたのは110円割れ、そして108円割れといった水準です。

ですが、7円32銭を割り込んで以降は実需ではなく、アルゴリズム系も含んだ投機筋の動きが中心かと。

何の理屈もないことですが、ドル円の5円刻みの水準では上りも下りも止まるか揉み合います。

足下の105円近辺も同じ様な展開になるのではないでしょうか。

まだドルの先安感は残っているのですが、とりあえず、ここらで少し買ってみます。

戻りが悪い様でしたら、直ぐに手放しますが」

「そうか、分かった。

ところで、まだ約束した新年会もやってなかった。
財務省の件もとりあえず終わったことだし、今日は銀座の‘下田’へでも行くか?」
下田とは銀座6丁目にある寿司処である。

「はい、そろそろかと期待していました」
電話の向こうで東城が渋い笑い顔を浮かべてるのが手に取る様に分かる。

「それじゃ、7時に予約をいれておく。
俺は出先から直行するから、現地で会おう」

「それでは、失礼します」
と言って、受話器を置いた。
久しぶりの東城との酒席である。
‘楽しみだ’

 

‘下田’の暖簾をくぐると直ぐに、
「おっ、いらっしゃい。若旦那」と言う、
威勢のいい店主の声が迎えた。

「若旦那はないでしょ、大将」

「東城さんの跡継ぎだから、若旦那で良いじゃないですか」
笑ってごまかすしかなった。

席に着くと間もなく東城が現れた。

笑い声が入口の外まで届いたのか、
「楽しそうじゃないか
どうせ俺の悪口でも言ってたんだろう」
と東城が言う。

 

「まぁ、そんなとこですか。
ところで、飲み物は何にしましょうか?」
店主が話をそらす様に言う。

「ビールの後、熱燗かな。
後はいつも通りで頼む」
下田では、特別な依頼をしない限り、店主任せだ。

運ばれてきたビールで乾杯し終えると、財務省の話を自分から切り出し、一連の話を東城に伝えた。

「そうか、それは御苦労だったな。
国金局長の竹中さんから礼の電話を貰ったが、良い内容だったらしいじゃないか。
彼も随分喜んでたよ。

それにしても坂本さんには弱ったもんだな。
彼が御主人じゃ、岬君も相当に苦労しただろう。

あの時彼女がお前の後を追っていたらと思うが、人生の悪戯ってやつに引っかかってしまった様だな。

そう考えると、俺がお前をニューヨークに行かせたことに責任を感じるよ」

「そんなことはありませんよ。
この件は僕自身の不甲斐なさから生じたことです。

坂本さんを夫に選んだのは彼女の不幸ですが、その不幸への引き鉄を引いてしまったのは僕です。
僕さえ田村さん等の罠に嵌らなければ良かったわけですから・・・」

「ところで、彼女は元気にしてるのか?」

「大分元気にはなった様な気がします。
ですが、さっきお話しした様に坂本さんが例の写真を彼女に送る可能性があります。

もしかしたらもう、送ってるかもしれません。
あれを見たら、少なからず岬も傷つくでしょうね。

2・3日に一度は必ずメールか電話があるのですが、このところ途絶えています。
僕の方から電話すればいいんでしょうが、写真の件でなんとなく探りを入れる様な気がして・・・。
拙いですよね」

「お前らしいとは言えないな。
早めに連絡をとってあげた方が良い。
市場にいる時の仙崎了らしくな。

それはそうと、下期も目標以上の成果を上げている。
市場以外の問題も多くて大変だったが、良く頑張ってくれた。
感謝するよ」
と言いながら、空いた盃に熱燗を注いでくれた。

「残り一カ月半で何も起きなければ、良い結果を残せそうです」
今度は東城の盃に注ぎ返した。

旨い寿司で、旨い酒を飲んだ後、二人は店を出た処で別れた。

「それじゃ」
と言い残すと、後ろ手を振りながら東城は7丁目方向へと歩き出した。

何処へ向かうのかも問わず、
「ご馳走様でした」と応えて、自分は晴海通り方向へと向かった。
目的はカウンター・バーの‘やま河’である。

 

‘やま河は’すずらん通りを晴海通り方向に向かって5丁目の真ん中近辺にある。
バーは地下一階にあるため、目立たない。
そのためか、カウンターが一杯になるのを見たことはないが、ママは‘あまり混まない方が良いのよ’と言う。

少し重いドアを押し開けると、
ママの声が聞こえてきた。
「いらっしゃい。
今日は山下さん、一緒じゃないの?」

「ええ、上司に誘われて、今そこで別れたところです。
いつものヤツを頼みます」

ラフロイグを注いだクラスとドライド・フィグ(イチジク)をカウンターに置きながら、
「少しお疲れの様ね」
と言う。

「そう見えますか?」
市場から離れ、アルコールが入ると岬のことが気になる。
それが顔に出るのかも。
‘拙いな’

一気にグラスを空けると、次のグラスを頼んだ。
心配する様にママは見つめるが何も言わない。
それが今は嬉しい。

Keithの’Melody at Night, with you’が静かに流れ、少しずつ心に潤いを帯びてくる。
そんな心の中を見透かすように
「仙崎さんは本当にKeith Jarrettがお好きなのね」
と微笑みながら言う。

「ええ、ジャズ・ミュージシャンの中では3本の指に入るかもしれません。
ママも何かお好きなものをどうぞ」
とアルコールを誘う。

 

土曜日の晩、国際金融新聞の木村宛てに来週のドル円相場予測をメールした。

木村様

とりあえず、ドルが戻すかと思います。

‘三陰線連続の叩き’は買いのサインとも言いますしね。

当り続けてきた予測も外し頃なので、もっと落ちるかも知れませんが・・・。

埋め草は適当に!

予測レンジ:105円~108円75銭

 

すかさず、木村からの返信があった。

仙崎様

毎週、予測をお送り頂きありがとうございます。

毎週当り過ぎですね。

ウェブ刊では仙崎さんのドル円相場予測のヒット数がダントツです。

今後共、宜しくお願い致します。

国際金融新聞 木村

 

(つづく)

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第36回 「対峙」

日曜(4日)の晩、岬に電話を入れた。

水曜日に予定されている財務省の勉強会では、彼女の夫である坂本と会うことになる。
単に講師を務めるつもりで出向くが、彼の方から何かを仕掛けてくる可能性がある。

そのとき、自分がどの様な行動に出て良いのか分からない。
岬とのことを巡って、勉強会後に対決する可能性もある。

そのことが切っ掛けで岬を傷つけてしまうことになるのかもしれない。
逆に逸早く彼女を夫から逃れさせてやれるのかもしれない。

だが、問題は岬が何を望んでいるのかだ。

その点を彼女に確認しておかなければならない。

 

「こんばんは。
そっちもこの冬は寒くて大変そうね?」

「ニューヨークほどではないけど、まあ寒いことは寒いな。
そっちこそ大変なんだろ?」

「そうね。
でも例年より多少雪が多いって程度かな。
大丈夫よ。

それより、確か今度の水曜日だったわよね。
例の講師の件」

「ああ、そのことで少し岬に確認をしておきたいんだ。
これまでの坂本さんの挑戦的な言動を考えると、当日何か俺に言ってくるはずだ。
勉強会中であれば質問で論破しようとするだろうし、その後であれば君との関係で絡んでくるかもしれない。

何としても俺を打ち負かすつもりで臨んでくると思う。

それはそれで受けて立つしかないが、心配なのはそこでのやりとりが一線を越えたときだ。

それが何かは分からないが、何が起きても岬は動じないか?」

「ええ、大丈夫よ。
了の気の済む様にして構わないわ」

「そうか、分かった。その話は止めにしよう。

ところで、昨年から受講すると言っていた金沢美術工芸大の聴講*へは行ってるのか?」

「ええ週に一度、松本美術館で講師の先生がいらっしゃるときに出席してるの。
作陶自体には興味はないけれど、陶磁器に関わる様々なことや歴史を学べて楽しいわ」

「それは良かった。
きっと、ハンサムな先生なんだろうな?」

「あら了、妬いているの?
先生は女性よ」
少し笑ながら言う。
急に岬が愛おしくなり、余計な一言を言いそうになったが頭を振って堪えた。

「妬いているわけじゃないけど、まあ、何となくな。
じゃ、切るぞ」
若干の照れもあって、そう言うしかなかった。

「おやすみなさい」
という岬の声を聞きながら電話を切った。

 

週初(5日)からドル円の上値が重たい。

日米株価の大幅値下げに反応しやすい展開となり、翌日には108円46銭まで下落した。

財務省の勉強会当日(7日)は、日本株が値を戻したこともあってドル円は109円台で比較的静かな展開となった。

場が荒れていないだけ、気が楽である。

勉強会の開始時間は3時だ。
40分ほどの余裕をみて、銀行を出た。

日比谷通りでタクシーを拾うと、
「財務省の正面玄関前へお願いします」と運転手に告げた。

夕方前ということもあり、10分もかからずに財務省の正面玄関前に着いた。

歩道と正面玄関を結ぶ通路の両サイドには衝立がある。
歩道と衝立が交差するところにセキュリティーの人間が二名立っている。

そのうちの一人に‘省内の勉強会の講師を務めるIBTの仙崎です’と告げると、アポ・シートをチェックし、‘どうぞ’と言う。
アポのない場合は南側の通用口に回されるが、今日はその必要はない。

正面玄関を通り抜けると中庭があり、その向こうの建物の二階に国際金融局がある。

正面玄関を抜けたところで、向こうの建物の入り口で吉住が手を振っているのが見えた。
車中から予め電話を入れてあったので、建物の入り口で待っていたのだろう。

「今日はお忙しいところありがとうございます。
また今回の講師役の依頼については何かとご無理を言って申し訳ありませんでした」

「なかなか殊勝なことを言うじゃないか」
笑いながら言う。
吉住は大学の同好会の後輩なので気を遣う必要はない。

「まぁ、一応役所内ですから」と言いながら、応接室に案内してくれた。
まだ時間があるのでここで待っててくれと言う。

数分後に外国為替市場課長の山上が現れた。
既に面識のある山下は気楽に市場の話をしてくる。
勉強会までの時間を過ごすことには気が紛れて良い。

その間に坂本が挨拶に来ると思ったが、姿を現さなかった。
勉強会の幹事役でもある彼が顔も出さないというのは不自然であり、失礼な話だ。

勉強会は南XX会議室で行われるという。
20名程度が楕円のテーブルに着くことができる会議室だが、通常は重要な委員会や会議に使われる部屋である。
単なる勉強会の部屋としては相応しくない。

3時近くになり、吉住が‘全員会議室に集まったので、そろそろお願いします’と迎えに来た。

会議室に近づくと、入口に170センチほどの男がこっちを向いて立っているのが目に入った。
少し険しい眼差しの神経質そうな男である。
坂本に違いない。

二人の距離が縮まったところで、男が挨拶した。
「坂本です。
いつぞやは電話で失礼しました。
本日はお忙しいところ、お越しいただきありがとうございます」

「仙崎です。
今日は講師役を賜わり光栄です」
光栄などとは微塵も思っていない。
ただ、迷惑なだけである。

「ことらへどうぞ」
という坂本の言葉に従って楕円テーブルの上座の方へと向かった。

 

幹事役の坂本が通り一遍の紹介を行い始めた。

こうした場合の紹介はスピーカーの経歴に加えて多少の色を添えるのが普通だが、彼の言葉に一切そうしたものが含まれていない。

‘民間銀行の一為替ディーラー如きに決して媚は売らない’という財務官僚の意地、あるいは自分の妻のかつての恋人への敵愾心の現れかもしれない。

紹介される最中、場を見渡すと、国際金融局長の竹中が楕円テーブルの右側に座っているのが目に入った。

楕円テーブルに座っている連中は竹中とほぼ同年齢の人間である。
つまり、他の局長、あるいは同等レベルの人間ということだ。

その連中を取り囲む様に、両サイドと後ろの壁を背にして中堅・若手官僚がノートを手にして立っている。

これは単なる勉強会ではない。
これだけの人数、メンバーがそれを物語っている。
南XX号室が今日の場所に選ばれた訳が分かった。

どちらにしても、話す内容は同じである。
気に止める必要はない。

坂本のどうでもいい紹介が終わると、右サイドの席から声がした。
竹中である。

「今日は、ここに出席している皆も知っている通り、世界でも有数の為替ディーラーであるIBTの仙崎了さんに御出で頂いた。

日頃、仙崎さんは外国為替市場を主戦場として活躍しているが、なかなかの学識者でもある。

つまり、知見に長けている人物ということだ。

皆もしっかりとお話しを拝聴する様に。

それでは仙崎さん、宜しくお願いします」

竹中の一言が終わると同時に部屋中に拍手が響き渡った。

突然の竹中の言葉に虚を突かれたかの様に坂本は唖然としている。

竹中の方に目をやると、礼を言う様に軽く会釈をした。

拍手が小さくなった頃合いを見計らって
「それでは、始めさせて頂きます」
と、淡々とした口調で話し始めた。

配布資料には『行動経済学と為替相場』というテーマと、幾つかの要点しか書かなかった。

聴き手を話に集中させるためのテクニックだ。
逆に言えば、話の内容と話術が問われることになる。

‘市場への参加者を、実需筋、投機筋、機関投資家に分類し、その上で短期・中期・長期に分けて其々の心理を分析する’というのが話の筋立てである。

この点を冒頭で触れ、淡々と話を進めた。

途中、分かり易い様にカーネマンの‘Thinking, Fast & Slow’の例を採り上げるなどしながら、徐々にリアルな為替市場に聴き手を引き込んでいった。

時折り‘なるほど’と言う様な聴き手の頷きが漏れてきた。
話が上手く進行している証拠である。

パワーポイントなどを使わなくても、話し方次第でスピーチに説得力を持たせることができるのだ。

コロンビア大MBA時代に心を打った講義にはそうしたものが多かった。

持ち時間の1時間半はあっと言う間に過ぎてしまった。
勉強会は2時間で、残りの30分は質問に当てられる予定である。

局長クラスや中堅クラスの数名から質問を受けたが、足下の米長期金利、内外の株式暴落、ドル円の先行きなどに関するものばかりで、有体に答えておいた。

概ね30分が経過したところで、坂本が質問を浴びせてきた。

「それでは、最後に私の方から一つだけ質問させてください。
先程、竹中局長から仙崎さんはなかなかの学識者という紹介がありました。

そこでお尋ねしますが、近年のアメリカ経済と金融政策について、経済学的見地から懸念されている点を教えて頂けませんか?」

「そうですね。

私が懸念している点は、低インフレと低失業率の併存への疑問、つまり、フィリップス曲線*への疑問でしょうか。

‘物価が突然上昇した場合、短期間で大幅な利上げが必要になる。
当然、それは経済・金融情勢にとって悪影響をもたらす’

これは 先日任期を終えたイエレンが昨年に再三言っていた言葉ですが、恐らく彼女は‘生産や実勢の雇用が完全雇用水準をオーバーシュートすることを懸念していたものと思われます。

もっとも、この点は線形経済学の観点からは上手く説明できないため、FED内での感触は良くない主張だったのかもしれません。

これ以上は時間を必要とする議論になるので、この辺で宜しいでしょうか?」

そこで再び一斉に拍手が起こった。

あまりの拍手の大きさに坂本も質問を続けられなくなくなった様である。

坂本は有体に「もう一度、仙崎さんに拍手を!」と言って、会を終えた。

 

会議室を出たところで、出席者のほとんどが仙崎に礼を言う様にして見送ってくれた。

吉住と山上がお茶でもと誘ってくれたが、まだ仕事があるのでと断り、その場を辞した。

階段で一階まで下り、中庭に出たところで後ろから呼び止められた。
坂本である。

「今日はありがとうございました。
なかなか面白かったですよ。
また機会があれば、宜しくお願いします。

ところで、先日田村さんから妙な写真が送られてきました。
あなたも結構なやり手ですね」
スマホに触ると、帝国ホテルでハグする男女二人の写真を見せて寄こした。

「この写真が私と何の関係が?」

「後ろ姿とは言え、この男性はあなたにしか見えませんが。
それに写真の女性はあの有名な阿久津志保ですよね。
これを妻が見たら、どう思うでしょうか?」

「いい加減にしませんか。
あなたの奥さんと私はかつての恋人同士という間柄だった。
だが、今はもう何の関係ない。
いつまでも下らない探偵ごっこをやってないで、早く彼女と別れてあげたらどうですか」

「仙崎さん、どうしてあなたが私と妻がそういう状態にあるということを知ってるんですか?
‘何も関係がない’と言ってるあなたが、離婚云々に触れている、不思議ですね」

「部下の連れ合いがあなたの奥さんとIBTの同期で親友だ。
その位のことは耳に入ってくる」

「なるほど、ああ言えば、こう言う。
流石に切り返しに慣れている一流ディーラーってわけか」

「坂本さん、本当は何を言いたい。
これは俺の想像に過ぎないが、あなたの奥さんはあなたを嫌っている。

でもあなたが奥さんを愛してるのなら、もう一度向き合ってみたらどうだ。
それでも奥さんがあなたの元に戻らないのなら、この先お互いに時間を浪費するだけだ。

日本で一番頭の良い大学とされている東大卒のあなたなら、そんな簡単な理屈が分からないハズはない」

「結構な理屈を言うじゃないか。
まぁ、これから先、何が起きるか楽しみにしておけばいい。

それから有名人の志保さん、本当に美人だな。
仙崎さん、あんたが羨ましいよ」

「坂本さん、これだけは言っておく。
写真はあなたの奥さんに見せない方が良い。

それと阿久津志保のことを、今後一切持ち出すな。
さもないと、あんたは霞が関に居られなくなる。
嘘じゃない」

「へぇー、お手並み拝見と行くか」
捨て台詞を残しながら、建物の中に消えて行った。

東大法学部卒、財務官僚、世間からは絵に描いた様な成功人生を送ってる様に見られているのだろうが、俺にはそうは見えない。

正面玄関を出たところで、改めて財務省の建物を振り返ったが何故かくすんで見えた。
ここが日本の財政政策と為替政策の要か・・・。

 

週後半になって再びドルの上値が重たくなり、ドル円は週末に直近最安値の108円28銭を抜き、108円丁度まで下落した。

 

土曜日の晩、国際金融新聞の木村宛てに来週のドル円相場予測を書いてメールした。

木村様

依然としてドルの下値を模索する展開を予測します。

焦点は、

1.下値圏では直近安値108.00円を抜くかどうか。

抜く様であれば、昨年最安値の107円32銭を試す可能性も。

2.上値圏では、109円75銭。

抜く様であれば、110円48銭を試す展開も。

予測レンジ:106円50銭~110円50銭。

 

特別なコメントはありません。

今週は少し疲れました。

埋め草は適当にお願いします。

IBT国際金融本部外国為替課長 仙崎了

 

(つづく)

 


*金沢美術工芸大の聴講:本文で述べられている様な同大学の聴講制度は実在しない。

*フィリプス曲線:失業率が低いほど、インフレ率が高く、失業率が高いほど、インフレ率が低いという‘両者のトレードオフの関係’を示したグラフ。
現代版のフィリップス曲線では、Y軸にインフレ率、X軸に失業率をとる。

 

今回でシーズンⅡも終わり、次回からシーズンⅢに入ります。

‘米金利や内外株価に翻弄される為替市場、岬を悩ませ続ける坂本の存在、次々と仙崎に問題が降りかかる。

果たして仙崎は期末を上手く乗り切ることができるのだろうか’

読みどころ満載のシーズンⅢにご期待ください。

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第35回 「噂」

大きな節目を割り込むと、有象無象の売りが出る。

節目の110円を割り込んだ先週のドル円相場、ドルロングの投げ、輸出筋のドル売り、そしてこれらの動きに乗じた投機筋のドル売りなどが堰を切った様に流れ出た。

だが、こうした相場は必ずオーバーシュートする。

巡航速度で下落している相場はごく短期間の調整を経てから再び安値を更新するが、今週はその流れが一旦途絶えるに違いない。

そんな考えから、国際金融新聞の木村に送った先週末のメールでは「今週はドル売りを手控える」と伝えた。

週前半(5日~6日)、市場は先週の流れを受け継ぐ格好でドルの下値を試したが、直近最安値の108円28銭を抜くことは出来なかった。

週半ばになってもドルの戻りは悪かったが、下げ渋った。
その日の東京の夕方に108円60銭を付けたものの、ドルは底堅さを増すばかりである。

‘一旦ガス抜きをしないと落ちない’
スクリーンのプライス・アクションがそう囁いている。

「少しビッドアップしてきた様だ。
買ってみるか」
と呟く。

山下にその声が届かなかった様で、
「課長、何か言いましたか?」
と尋ねてきた。

「ああ、‘買ってみようか’と言ったけど。
声が小さくて悪かった」

先刻から部長席で資金課長の大河内と田村が楽しそうに話しているのに気を取られていたせいで、
山下への言葉が知らぬ間に小さくなっていた様である。

部長席は俺の座席から後方6・7メートルのところにあり、ほとんど会話の内容は分からないが、その中に‘阿久津志保や女性誌の名前’が途切れ途切れに聞こえたのが気になっていた。

気の良い山下はそんな事情も知らずに、
「いいえ、自分の集中力が足りないせいです。
50本の買いで良いですか?」
と、恐縮しながら言う。

「ああ」

「67で20本、68で30本」

「了解」

ディールの処理を終えた山下が
「課長、何か気になることでも?」
と心配そうに聞いてきた。

「ああ、後ろの会話が少し」
自分の胸の前で右手の親指を部長席の方に向けて見せる。

「どうせいつものご注進話でしょうが、あいつら本当に呑気なもんですね。
こっちがいつも収益に追われて奮闘してるのに」

「まあ、そうぼやくな。
お前だって奮闘するのが好きでこっちの世界にいるんだ」

「それもそうですね」
と言いながら、スクリーンに目をやりながらEBS(電子ブローキング・システム)のキーを叩き出した。

何かジョビングの手掛かりを得たらしい。

暫くすると、ディーリング用ではない方の電話が鳴った。
バックオフィスを仕切る山根からである。

「仙崎君、今市場は大丈夫?」

「ええ、静かですが。
何でしょうか?」

「電話では少し話しづらいので、
上で良い?」
上とは社食のことである。

「はい、それじゃ今行きます」
と言って電話を切った。

「山下悪いが、少し山根さんが事務処理の件で話があるそうだ。
上にいってくる」

「了解です」

社食に着くと、直ぐに山根の姿が目に入った。
窓際に立ち、眼下の日比谷通りを眺めている。

「山根さん、ヘッドライトの流れでも見てるんですか?」

「あっ、仙崎君。

ええ、昼間は皇居の森が綺麗で、夜は日比谷通りが綺麗。
これだけでも、IBTに勤めてる価値ありってとこかしら」

「そうですね・・・。
ところで、電話で話づらいことって何です?
結婚でも決まったんですか?」
半ば茶化して聞いてみた。

「馬鹿ね。
もうこの歳になって、それはないわよ」

「へぇー、そうなんですか。
まだイケルと思いますが」

「おばちゃんをからかわないでよ」
と言いつつも、少し嬉しそうな顔を見せる。

眼鏡を外せば、なかなかの美人だと思うが、
今までそれに触れたことはない。

「それで、話って?」

「‘大河内が仙崎君のことで変な噂を流してる’そうよ。

‘最近、女性誌や経済誌を賑わしてる’阿久津志保と君が帝国ホテルで会ってたのを彼が目撃したというのがその噂。

どうなの?」

「それは本当のことですが、他には?」

‘嘘を言っても仕方がない’

「うちの若い子がスマホの写真を見せられたらしい。

二人のハグの瞬間で彼女の顔は確認できるけど、君らしい人物は後ろ姿ではっきりしない
みたいね。

そっか、会ったのは事実か。

それが事実だとしたら、行内に悲しい思いをする女の子達がいるわね」

「ちょっと待って下さいよ。

僕が彼女と帝国ホテルで会っていたのは事実だけど、付き合ってるなんて言ってませんからね」

それ以外のことは言う必要もないし、伏せておいた。

「そっか。

でもどうせ田村の手下みたいな男だから、話に尾鰭が付いてると思う。

まぁ、二人がどういう関係かは知らないけど、気を付けてよ。

うちのホープがスキャンダルで潰れるなんてゴメンだからね」

「大丈夫ですよ。

それに彼女はもう、表舞台に立つことは当分の間ありませんから」と言い切った。

言う必要のないことだが、志保がコネティカットのファンドに移籍し地味な仕事に就くということも明かした。

マイクには当分、志保をバックオフィスの仕事に就かせる様に言ってある。

納得した山根は、
「そっか、‘人の噂も何とやら’。
頑張ってよ」
と激励の言葉を残してオフィスに戻って行った。

‘これで、先刻の部長席の会話の中身が解けたってことか。
どうせこの話は既に田村から坂本に伝わってる’

デスクに戻ると山下がまだ頑張っていた。

「どうだ?」

「やはりビッドですね。
先程の買いの処理はどうしますか?」

「週内には10円を抜けると思うが、長続きはしないはずだ。
お前なら何処で利食う?」

「10円25(110円25銭)辺りでしょうか」

「それじゃそこで売り50本、週末まで回しておいてくれ」

「まだやるのか?」

「はい、もう少しだけ」

「悪いけど、俺は先に帰るぞ。
もう3末(3月末)の見通しも立ったことだし、お前も早く帰れよ」

日比谷通りでタクシーを拾うと、青山の’Kieth’に向かった。

まだ時間の早いせいか、店内には自分以外に客はいなかった。

「マスター、いつもの酒と何か食事を頼む。
少し腹が減った」

「パスタだったら、直ぐにペペロンチーノが出来ますが?」

「ああ、それで良い。
それにサラダも適当に。

あとBGMはKiethの‘Staircase’を」

目を閉じながら財務省の勉強会のことを考えていた。
テーマは何でも良いと言うが、週末に纏めておく必要がある。

為替相場の見通しはそこらに幾らでも転がってる。
『行動経済学と為替相場』で行くか・・・。

暫くして目を開けると、ラフロイグのボトルが置かれていた。

マスターの方に目をやると、
「今日は相当に飲みそうなので、ボトルごと置いておきます」
とでも言いたそうな笑みを浮かべている。

こっちも笑って返すしかなかった。

ドル円相場は週末に110円47銭を付けたが、それ以上は伸び切れなかった。

週末の土曜日、国際金融新聞の木村宛てに来週のドル円相場の予測をメールした。

木村様

少しドルが買われても伸び切れないと思います。

とすれば、後に反落でしょうか。

予測レンジ:107円50銭~111円50銭

与件は沢山あるので、行間の埋め草は適当にどうぞ。

P.S. 米10年債の利回りが前回FOMCの中立金利(FEDの利上げの落としどころ:2.75%)まで到達しています。

FEDが正常化路線を急ぐのかどうかが注目されます。

仮にややハト派的なカシュカリ(ミネアポリス連銀総裁、来週に講演予定)がFFレートの経路の変更を示唆する様な発言をすれば、ドルショートが踏まれる可能性もありでしょうか。

ただ、米株が大きな調整を迎えそうな局面では、前向きなドル買いが出るとも思えません。

また2月中旬の米国債償還と利払いに合わせて、本邦機関投資家のレパトリも考慮しておきたいところです。

3月末を控えての実需のドル売りも恒例行事です。

IBT国際金融本部外国為替課長 仙崎 了

(つづく)

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。