月別アーカイブ: 2018年4月

第46回 「沖田の帰国」

やっと、ニューヨークの沖田が戻ってきた。
これで、新年度の臨戦態勢が整う。

週初(16日)の早朝、いつも通りの時間にディーリング・ルームに入ると、既に沖田はインターバンクのデスクに座っていた。

数週間前までは山下が陣取っていた席である。
太目の山下の体形とは違い、痩身で精悍だ。
日頃、テニスで体を整えてきた成果だろう。

沖田はあっちで地元のカントリークラブに所属し、週中の疲れを発散していた。
彼と幾度か対戦したこともあったが、学生時代にテニス同好会に所属していただけあって、ただひたすら遊ばれたという記憶しか残っていない。

「一年ぶりか、顔を見るのは。
毎日の様に電話で話してるから、あまり懐かしさも湧かないな」
右手を差し出しながら、声をかけた。

「そうですね。
でもまた、リアルな現場でご一緒できて光栄です」
その右手を力一杯握り返しながら、元気そうな声で言う。

‘一段と頼もしくなった様だ’

「それじゃ、とりあえず、この部屋の皆に紹介しておくか」
と言い、ディーリング・ルームを一緒に回った。

一通り、紹介し終えたところで、
「東城さんには自分一人で挨拶してこい。
その方が良い」と指示した。

 

週末の米英仏のシリア攻撃も単発で終わるとの見方が拡がり、金融市場全体にどことなくリスク・オンの気配が漂う。

日本株がそこそこ堅調に推移するなか、ドル円も107円前半で強含みに推移している。

翌日(17日)、日米首脳会談で‘トランプが安倍首相に通商上の厳しい注文を突き付けてくるのでは’との懸念が浮上し、午後に入るとドル円は一時6円89銭(106円89銭)まで下落した。

だが、下値圏でのドルは底堅さを示す。

‘もう今週は落ちそうもないな’

「沖田、ここはどう思う?
俺は先週末にショートを振ってる。
コストは60(107円60銭)だ」

「そうですね。
仲の良いヘッジファンドがドルショートを手仕舞うと言ってました。
週末までに買い戻してくるでしょうから、7円後半までは上がるかもしれませんね」

「そうか、それじゃ、50本買い戻すか。
そして新たに50本ロングする。
俺はこっちで50本買うから、お前はロンドンで50本買ってくれ」

「96(106円96銭)です」

「了解、こっちは95だ。
そっちの50本は上の利食いに充ててくれるか。

お前、昨日のニューヨークで7円25で20本ショート・メイク(ドル売り)した様だが、コストがあまり良くないな。

俺が買った50本のうち20本使うか?」

「はい、そうですね。
お言葉に甘えて、95の20本、使わせて頂きます。
残りの30本はどうしますか?」

「先週の高値は7円78だったから、
75で利食いのリーブを週末まで回しておいてくれ。
もう落ちないから、ストップは不要だ」

「了解しました」

「ところで、山下はどうだ?」
沖田がディールの処理をし終えたところで聞いてみた。

「多少英語に問題はある様ですが、何とかこなしている様なので大丈夫だと思います。
それより、支店の問題で少し気になることがあるのですが」

その会話が右手のデスクに座る野口に聞こえたらしく、こっちを向いた。

‘沖田の話は公にできない内容らしい。
場所を変えた方が無難だ’

「急ぎの話でなければ、お前の歓迎会を兼ねて金曜日の晩に聞くということでどうだ?
もっとも、帰国して間もないから、ご家族のこともある。
日を改めて構わないが」

「大丈夫です。
家内は金曜から週末にかけて、実家に行くと言ってましたから」

 

その日以降、ドル円は、日米首脳会談が波乱なく終了したことや日経平均が節目の2万2000円を抜いたことで、107円台で強含みに推移した。

 

金曜日の晩、沖田を銀座の寿司処‘下田’に連れて行った。

「旨いですね。
ここは東城さん御用達のお店ですね」

「ああ、昨年の俺の帰国祝いもここだった。
今日は東城さんの支払いで良いそうだ。
だから存分に食って飲んでくれ」

「それじゃ、遠慮なくいきますか」
小上がりに座る二人の笑い声がカウンターの方まで響き渡った。
6時半という時間のせいか、まだ店内には二人だけで、他の客に気を遣う必要もない。

その笑いに乗じて、大将が声を掛けてきた。
「了さん、楽しそうだね。
お酒は、あの時と同じ獺祭の極上版で良いかい?

東城さんからさっき電話を貰ったよ。
お二人に最高の寿司と最高の酒をだってね」
あの時とは、東城が俺の帰国祝いをしてくれた日のことだ。

‘相変わらず、気の付く人だ’

旨い寿司と酒で気持ちがほぐれたところで、
「例の支店の話って何だ?」
と切り出した。

「実は、現地企業に融資した金が焦付き、その件で山下さんにも影響が出そうなんです。
金額は2000万ドルほどですが、支店としては小さくありません。

貸出前の審査が甘かったことが原因の様ですが、支店のコーポレート・ファイナンス部門が負う不良債権に変わりはありません。

支店長は、他の部門でターゲット以上の収益を上げ、その分で不良債権を償却するという考えの様です。

要は、山下さんにも負担がかかる可能性があるということです」

「それは理不尽な話だな。

部門ごとの損失は本部制の縦割りで解決すべきことだが、支店長にも統括の責任がある。
だから店内の他部署の上がりで償却分を賄い、支店収益を落としたくないってことか。

それは、既定事実なのか?」

「支店上層部ではそうですね。
山際さんからはそう聞いています。

コンフィデンシャルとは言っても、店全体に行き亘るのは時間の問題でしょう」

「それで、山下には伝えてあるのか?」

「はい、ただ各部署の具体的負担額が決まっていないので、今の処は山下さんも動き様がありません」

「あいつも赴任早々、ついてないな。
山際さんの後任はもうスイスの横尾さんで決定だし」

‘いざとなったら、助けるしかない’

「俺も山下のことは気遣うが、お前もあいつと話していて気づいたことがあったら、教えてくれ。

あいつは体形に似合わず繊細なところがある」

「はい、心得ています」

それから一時間後、その場をお開きにした。

明日の早朝、沖田は仙台の実家に帰国の挨拶に行くという。
無理に二件目を誘わなかった。

 

沖田と別れた後、数十メートル歩いたところにある‘やま河’へと足を向けた。

「いらっしゃい、お一人?」

「ええ、山下の替わりが着任したので、今度連れて来ますよ」

「お願いします。
仙崎さんの同僚や部下でしたら、品も良いでしょうから大歓迎よ。
飲み物とアテは、いつもので良いかしら?」

「はい。
BGMはColtraneの‘Ballads’を。
音量は他のお客さんの邪魔にならない程度で」
カウンターの奥に、男同士の二人連れ、二組が静かに話し込んでいる。

‘Say it(Over and Over Again)’がTenor Saxの音色に乗って流れ出すと、彼らの聴き入る空気が伝わってきた。

トラックが‘Too Young to go steady’に移る頃には、どこからともなく「ママ、もう少し音量を上げて」という声が聞こえた。

‘嬉しい限りだ’

ラフロイグとColtrane、最高の組み合わせで至福の時が流れる。

 

社宅に戻ると直ぐ、デスクの上のPCにログインした。
モニターで全ての通貨ペアを一覧した後、チャートに目を移す。

ドル円は7円86(107円86銭)へと跳ねた様だが、その後は伸び悩んでいることを映し出している。

‘日米金利差拡大が背景’と、メディアは伝えているが、実態は沖田が言っていたヘッジファンドが買っていた円を売り戻しただけだ。

色気のない相場に見切りをつけて、Outlookをクリックした。
国際金融新聞の木村宛てに来週のドル円予測を書かなければならない。

 

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木村様

見えている与件でポジションを持つと、やられる展開ですね。

ここからは上はドルの需給が緩いと思うのですが、本邦の機関投資家も少しずつ外物を買いたがっているのは事実です。

8円台(108円台)は売りたい実需がいて、6円台は買いたい実需と機関投資家がいる。
つまり、来週もその間での揉み合いでしょうか。

でも、いずれはUSTR(米通商代表部)が動いてきますね。
中間選挙の時期を考慮すると、その動きは年前半でしょうか?

1990年代前半のパターンだとすると、ライトハイザーが‘右手に自動車部品等の輸入数量増、左手に円高’というプラカードを掲げてくることは間違いないと思います。

日本が歴然とした対米黒字国であり、‘実質実効レートで円は25%も過小評価されている’というIMFのエヴィデンスを持っているのであれば、‘ドル円の下値’はまだ深いところにあると考えておいた方が無難かもしれません。

問題は、上で書いた様にその時期ですね。
木村さん、USTRの動きで何かあったら、教えてください。

来週の予測レンジ:105円50銭~108円50銭

IBT国際金融本部外国為替課長  仙崎 了

追伸:埋め草はいつも通りお任せ致します。

(つづく)

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第45回 「誘い」

週初(9日)の東京市場で107円直前で寄り付いたドル円は、米中貿易摩擦やシリアを巡る米露の対立を材料に、週後半まで揉み合いが続いた。

だが、ドルの下値は先週よりも1円ほど切り上がり、安値は週前半の106円62銭で止まっている。
少しドルが上に動く兆しである。

‘1月上旬に113円台で推移していた相場が3月下旬に104円64銭まで下落したことを振り返れば、この程度のドルの戻りは当然のことだ’

相場が変化したのは、週末の金曜日のことだった。

シリア情勢を巡って米国の態度が軟化したため、日本株が堅調となり、ドル円も2月下旬以来の水準となる107円後半まで上昇したのだ。

‘ただこの先、誰が積極的にドルを買うのかが問題だ。
買うとしたら、短期のスペック(投機筋)か新年度入り直後の機関投資家か’

シリア問題の行方が見えないなか、週越えのポジションを持つにはリスクが高い状況だ。
だが、ポジションを持たないことには場が良く見えない。

思い切って、ドルを売ることにした。

 

「小野寺、ロンドンを読んでドル円50本(5000万ドル)売ってくれ」

「はい、60(107円60銭)です」
山下に匹敵するぐらいのレスポンスだ。

「了解。
ストップは入れなくて良い。
8円25(108円25銭)taken のコールレベルだけ頼む」

小野寺は「はい」と言いながら、
「課長はキナ臭い与件があるときに、週越えのポジションを持って怖くないんですか?」
と聞いてきた。

「怖くないと言えば嘘になるが、仮にトランプのシリアに対する姿勢が軟化しても、ドル円は精々108円台前半だ。

逆にシリア攻撃が行われた場合は、ドル円の下値は結構深いかもしれない。
そんな状況では様々な情報が飛び交い、市場はバタつく。

そんなときに作ったポジションは、持ち切るのが難しい。
だから、今売ってみただけだ。

それにまだ新年度が始まったばかりだ。
やられても取り戻せるしな」

「そうですか、僕はそんな勇気を持てませんが」

「ならば、試しにここで売ってみろ。
でないと、場の味も良く分からないだろ?」

「はい、それじゃ、勇気を出して10本売ってみます」
EBS(電子ブローキング・システム)のキーを叩き終えると、ニコッとしながらこっちを見た。
覚悟が決まった顔つきである。

 

そんな折、
「課長、テレビ国際の中尾さんからお電話です」
と誰かの声がした。

‘来たか’

「ディーリング用でない電話番号を教えて、そこに掛けてくれと伝えてくれ」
こっちから掛け直す必要もない相手だ。
時を待たず、デスクの上のディーリング用でない電話が鳴った。

「初めまして、仙崎です。
さっきの電話はディーリング用のなので、こちらに掛けて頂きました。
失礼致しました。

話は番組の件ですね?」

「はい、番組のキャスターを務めている中尾と申します。
番組の件でお電話させて頂きました。

お忙しいところ、突然申し訳ありません。
それで早速ですが、打ち合わせで今晩お時間を頂けませんでしょうか?」

急な話である。

「4月入りでコメンテーターを入れ替えているのですが、仙崎さんにご担当をお願いする予定の月曜日だけが決まっておりません。

今は、局の経済部の人間が担当していますが、できればゴールデンウィーク開けからでもお願いできればと存じます。

そのためには、来週中にも上に報告書を提出する必要があります。

今日の番組打ち合わせは8時からですので、その前にお時間を頂けたらと・・・」

言葉は丁寧だが、相手の言い分は関係なく、畳みかける様な口調である。
局内では誰も太刀打ちできないほどの才女らしい。

「分かりました。
それで、局にお伺いすれば、良いのですね」

「はい、そうして頂ければ、助かります。
局の入り口のセキュリティーで仙崎さんのお名前を伝えて下されば、問題ない様に手配しておきます。

今5時半ですから、6時半頃ということで宜しいでしょうか?」

「はい、それで結構です」

「それでは、お待ちしております」

 

6時過ぎに銀行を出たところでタクシーを拾い、
運転手に「麹町のテレビ国際へお願いします」と告げた。

タクシーは日比谷通りを南に下り、日比谷濠、桜田濠を右手に見ながら、局へと向かう。
桜の時期を終え、綺麗な新緑が濠沿いの歩道を飾る。

6時過ぎという時間帯のせいか三宅坂付近で少し渋滞に出合ったが、6時半前には局に着いた。

セキュリティー室の脇で待っていてくれた若手男子局員が10階にある経済部の応接室まで案内してくれた。

数分すると、身長160センチほどの細身の女性が現れた。
ウィキペディア調べでは43歳だが、幾分若く見える。
細面の美人だが、冷たい印象を受けるのは彼女の性格のせいなのか、局内で一線を維持するために被ったベールのせいなのかは分からない。

国際金融新聞の木村が言う様に男癖が悪い様には見えないが、先入観を持たない方が無難だ。

「初めまして、中尾佐江です」
と言いながら、名刺を差し出す仕草は腰が低い。

「仙崎です、宜しくお願い致します」
こっちも名刺を渡した。

早速、番組の申し合わせ事項についての説明を切り出してきた。
「ワールド・マーケット」という番組の趣旨や内容についての説明はない。
当然、銀行員ならこの番組を見てるという前提で話は進む。
とんでもない思い込みである。

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経済番組のコメンテーターの話には全く興味がないので、ほとんどこの番組を見たことがない。

ポジションも持ったことのない経済学者やエコノミスト連中の市場の話が役に立つはずはない。

一般経済についても、ロイターや新聞の情報があれば十分だ。
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暫しの間、番組の進行や事前の打ち合わせ事項についてのレクを受けた。

大凡の話を終えたところで、
「仙崎さんは独身ですか?」
と聞いてきた。

「ええ、そうですが・・・」

「私もですの。
でもバツイチで、子供付きですが」
何となく顔付きが普通の女性に変わっていた。

「へぇー、そうですか。
それは何かと大変ですね」

「ええ、でも母が子供の面倒を見てくれてますから、日常は全く独身と変わりませんのよ」
やたらと独身を強調してくる。

「そうは言っても、これだけの番組のキャスターを務めてらっしゃるのだから、何かと大変かと思いますが」

「‘慣れてしまえばって’とこかしら。
それより先崎さんのお仕事こそ、24時間だから大変でしょ。
さぞおモテになるでしょうに、デートも儘ならないんでしょうか?」

「そうかもしれませんね」と笑いながら言い、彼女の言葉をあしらった。

‘そろそろ潮時だな’

「申し訳ありません。
これから銀行に戻らなければならないので、そろそろ失礼します」
と言い、ソファーから立ち上がった。

「そうですか、それは気づきませんで、失礼しました。
それでは、5月7日にお待ちしていますので、宜しくお願いします」

応接室から出たときの彼女の顔は、既に仕事モードのベールを被っていた。
‘流石だな’

 

局を出たところでタクシーを拾うと、青山へと向かった。
ジャズ・バーの’Keith’が目的の場所だ。

人と会ったときに日時と場所を名刺に記入しておくのを習慣にしている。
車中でそれを記入しようと、彼女の名刺を取り出すと、裏面に何かが書き込まれているのが目に留まった。

そこには手書きで携帯番号、090xxxxxxxxと書かれていた。
「男癖が悪い」という彼女の片鱗を見た様な気がした。

 

Keith の重いドアを押し開けると、
マスターの「お久しぶり」という元気な声が飛んできた。

「本当にお久しぶりです。
今日は一人だから、カウンターで。

酒とアテはいつもの、そしてBGMはMiles の‘Round about midnight’をお願いします」

「山下さんがいなくなって、連れに困るでしょ?」

「でももう直ぐ、ジャズ好きがニューヨークから帰ってくるから、連れて来ますよ」

そう言いながら、スマホを取り出すと、メールを書き出した。
国際金融新聞の木村宛てである。

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木村様

今日、例の中尾さんに会って来ました。
噂は本当かも知れませんね。

だとすると、この先疲れそうな気がします。

それはそれとして、来週の予測をお伝えします。

あっちの友人からの話では週末に米国がシリアを叩く可能性が高いとのことです。

もしそうであれば、とりあえずは「株安→ドル円下落」でしょうか。

‘今晩にも発表されるかもしれない「米財務省の為替政策報告書」では日本が監視対象国に入るでしょうし、来週の日米首脳会談でトランプが貿易不均衡を追求してくることも間違いないと思います’、そう考えれば円高に振れる。

ですが、そんな筋書きは誰にでも描けそうなので、疑問が残るところです。

私もドルショートで構えていますが、先週と同様にチャートの顔つきからはあまりドルが下がらないのかもしれません。

与件から離れて予測すれば、揉み合い継続の様な気がします。

予測レンジ:104円50銭~108円25銭

IBT国際金融本部外国為替課長 仙崎 了

 

(つづく)

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第44回 「新年度」

左斜め前のディーリングボードの席に山下の姿はもうない。
沖田がニューヨークから戻るまでは、そこが空席になる。

少し落ち着かない感じだ。
‘当分の間、誰かをそこに座らせておくか’

「小野寺、沖田が戻るまでの間、今日からお前はここに座って野口や浅野、そして俺のサポートをしてくれ」
小野寺は昨年、IBT証券外債部から銀行に引き抜いてきた男だが、今は若手のホープとして頑張っている。

「はい、分かりました」
というと、直ぐに荷物をまとめて山下の席に移ってきた。

ボードに着くなり、周辺の皆が‘チーフへの昇格、おめでとう’などと言って冷やかした。
少し照れた様子を見せながら、‘何だか、一日警察署長みたいですね’と上手く返している。

‘何となく、良いチームに仕上がりつつあるな’

立ち上がると、‘皆聞いてくれ’と声を掛けた。
「今日から新年度だ。
また今年度もよろしく。

今年は新人の受け入れゼロだ。
沖田が戻るまでは一人欠員になるから、彼が戻るまで皆協力して頑張ってくれ。
話はそれだけだ」

言い終えると、‘はい’とか‘了解です’という元気な声が部下から聞こえてきた。

週初(2日)の市場は、静かである。
ドル円は106円台前半で寄り付いた後も、様子見の展開が続いた。

朝方に発表された日銀短観には、大企業・製造業の今期通年の想定レートは109円66銭と記されている。

‘足下のドル円相場に比して、想定レートは少し甘すぎないだろうか?’

短観上の想定レートは調査対象企業が事業の基準である。
それだけに、このままドル円が続落する様なことがあれば、ドル売りが集中することになる。

まだ米政権は通商政策で一定の距離を対日で維持しているが、中間選挙までの7カ月の間、どこかで距離を縮めてくるはずだ。

目先では、米財務省が議会に提出する「為替政策報告書」の中で、日本への言及がどの程度のものになるのかが気懸りである。

報告書は今月15日前後に公表される。

ムニューシン財務長官はかなりトランプ寄りの人物だ。
トランプが論功行賞型の人材登用に傾いていることを見抜いている彼は数カ月前、‘ドル安は、米国(の貿易)にとって良い’と臆面もなく言い放った。

そんな彼が「報告書」に対米黒字では世界ナンバー2の日本を厳しく批判してくる蓋然性は高い。

そうなれば、一挙にドル安円高が加速し、輸出企業が慌ててドルを売ってくる。

そんなことを考えていると、東城から呼び出しが掛かった。

 

執務室に入ると、東城はソファーでウォールストリート・ジャーナルをテーブルに広げていた。

「まあ、座れ」
とテーブルを挟んで反対側のソファーに手を向ける。

「何か、興味深い記事でも?」

「いや、役員会議が終わったばかりで、一休みがてらに読んでいただけだ。

ところで、前年度はよく頑張ってくれたな。
お陰で国際金融部門は好成績を残すことができた。
礼を言うよ。

そのうち、お前の好きなものでも食べに行くか」

「はい、ありがとうございます。
場所は考えておきます」
と少し笑みを浮かべなら答えた。

「年度替わりで、忙しいだろうから、もう少し先だな。

年度替わりと言えば、先週、テレビ国際の友人から電話があった。
例の経済番組への出演依頼だ。

番組自体は継続するそうだが、コメンテーターの入れ替えを行うので、このタイミングで頼みたいと言ってきた。

彼にはお前が落ち着いてからと伝えてあるが、どうする?」

「半年もお待たせしてますから、そろそろ決めないと拙いでしょうね。

分かりました。
引き受けますと、ご友人に伝えて頂いて結構です」

「分かった。
そう伝えておこう。

悪いな、お前には一銭も入らないのにな」
済まなそうに言う。

「本当にそうですね。
その分、本部長の小遣いが減るってことですが」

「そりゃ、そうだ」
二人の笑いが部屋に流れた。

心地の良い笑いを最後に、
「それでは、失礼致します」
と言って、執務室を後にした。

 

ドル円はその日のニューヨークで105円66銭まで下落した。
NYダウが大幅に下落したのに連れたのだ。

翌日(3日)の東京でも、軟調となったNY株式市場の地合いを受け継ぐ格好で、日経平均が大幅安となった。

為替市場もこれに連れてドル売り円買いの動きとなったが、前日の安値を更新するまでには至らなかった。

少しドルがショート気味だな。
ここで下がらないと、週末の米雇用統計に向けてショートの踏み上げが起きる。
果たして、その日の海外でドル円は106円台後半へと跳ね上がった。

翌日(4日)の夕方、ドルが少し下がったところで、
「課長、ここの辺は買いどころでしょうか?」
小野寺が聞いてきた。

ドル円は106円10前後で動きが止まったままだ。

「ロングしたいけど、貿易制裁を巡って米中の出方が気になるってことか?

それを頭の隅に残しておくのは良いが、今は市場の心理だけを考えろ。
先週と今週前半、ドルを叩いても落ちなかったんだ。

こんな状況では、少しドルが上がると思った方が良い。

来週以降は分からないが、今週はもう6円(106円)割れはないと思う。
それで、幾ら抜きたいんだ?」

「1円です」

「そっか、7円25(107円25銭)辺りで利食いを入れておくんだな。
もう少し伸びると思うが、雇用統計前だから深追いしない方が良い。

確か7円30近辺にチャートポイントがあったはずだ」

「えーと、30が3月13日の戻り高値です」

「そうか、とすれば、それより上は髭になるはずだ。
どうせ買うなら今買え、俺も買う。

俺は50本、シング(シンガポール)に行く。
お前の分はこっちのEBSで買え」

「15で10本」

「こっちは、13で30本、15で20本だ。
お前は13の10本を使え。

15の10本は、俺が引き取る。
利食いはさっきの通りで良い。
ストップは入れるな。
但し、コールレベルだけは海外に伝えておけ。

大丈夫だ。
絶対、利食えるから安心しろ」
笑みを見せながら言う。

「ありがとうございました」
不安な気持が消えたのか、小野寺の顔が先刻よりも和らいだ様に見えた。

‘少しずつ、若手を育てて行かなければ’

 

ドル円は5日のニューヨーク市場で、107円49銭まで上昇した。

週末の米3月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)の増加が予想外に低迷したため、ドルは全通貨に対して緩んだ。

ドル円は結局、前日の高値を抜くことが出来ないまま、106円95銭前後で来週を迎える格好となった。

 

土曜日の晩、社宅でBGMに Paul Desmond の Feeling Blue を流しながら寛いでいると、
スマホが鳴った。
国際金融新聞の木村からである。

「珍しいですね、木村さんから電話とは。
どうしたんですか?」

「仙崎さんにやっとテレビに出演して貰えるって話を聞いたもんですから。
ワールド・ファイナンス、いえ今月からワールド・マーケットに改名になりましたが、局の担当者達は喜んでましたよ。

期待されてますよ、仙崎さん」

「私が出たって、視聴率は上がらないですよ。
所詮、一為替ディーラーに過ぎないんですから」

「いや、財務省のセミナーも省内で大好評だった様ですし、仙崎人気は上がっているはずです」

「えっ、私がそこで講師を務めたことを知ってるんですか?」

「まあ、仕事柄、財務省やBOJ(日銀)には知り合いが多いので。
それはそうと、その番組出演の件で一つお伝えしておくことがあって、電話をさせて頂きました。

実は、番組のニュース・キャスターの中尾佐江には良くない噂が出回っています。
男癖が悪いそうなので、気を付けて下さい。

仙崎さんは風貌も仕事ぶりも格好良過ぎるから。
まぁ、その点で困ったことがあったら言って下さい。
こっちにもルートもありますから。

ところで、来週の予想はどんな感じでしょうか?」

「妙な話を聞かされたせいで、いい加減な予想になりますが、いいですね?」

笑い声だけで返事がない。
仕方なしに続けた。

「今回のNFPは意外な結果でしたが、元々データ収集の方法に問題があるので、修正の多い統計です。

とは言え、この結果を見ると、感覚的には誰しもドルを買う気にはなりませんよね。

でも、少し幾つかのチャートに変化が見られるため、目先ではドルは予想外に底堅いかもしれません。

107円台後半では少し需給が緩いと思うので、簡単にはドルが上がらないでしょうが。

そう考えれば、来週も揉み合う展開と読むのが正着かと。

予測レンジは105円~108円20銭です。

埋め草は任せます。

良い情報、いや悪い情報かな、ありがとうございました。

それじゃ、失礼します」

電話を切った後、木村の話が少し気に懸った。

テレビ国際の役員だという東城の友人からの依頼だったため出演を引き受けたが、何となく気が重くなってきた。

 

デスクに置いてあるウィスキーボトルから琥珀色の液体をグラスに注いだ。
液体はボウモア12年である。
普段ならダークチョコレートを想わせる味がするはずのアイラも、今日はどことなく違う。

途中で止めたミュージック・システムを再びオンにすると、Paul の ソフトなアルトサックスが流れ出した。

木村の話でざらついた心がソフト過ぎるぐらいソフトな音色に少しずつ癒されていく。

リンツの70%ダークチョコレートを齧りながら、ボウモアの注がれたグラスを呷り続けると、一切のざらついた気持ちが消え、急に岬のことが恋しくなった。

既にスマホを手にしている。

「元気か?」

「えっ、昨日も話したばかりなのに、元気かって変じゃない?」

「そう言えば、そうだな」

「それより了はどうなの。
相棒がいなくなってしょぼんとしてるんじゃないの?」

「まあな。
それはそれとして、5月の連休に会えないか?」

「それが、ゴールデン・ウィークに集中講義があるので、金沢に行かなければならなくなったの。
少し九谷とかも見ておきたいから丁度いいかも」

「えっ、そうなんだ。
その頃は会えると思ったのに、それは残念だな」

「ごめんなさい。
また、機会を作るから・・・」

「わかった。
それじゃ、切るぞ。
おやすみ」

「おやすみなさい」

‘何故かこのまま会えなくなる様な気がする。
いつも通りの会話だったが、ディーラーの勘だろうか?’

釈然としない気持ちを振り払う様に、再び液体を喉に流し込んだ。

 

(つづく)

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。

第43回 「旅立ち」

週初(26日:月曜日)、早朝のドル円は先週末の円買いの流れを受け継ぐ形で、下値を試す展開となったが、104円65銭止まり。

日経平均もやや堅調地合いに転じつつある。

‘これだと、今週はもうドル円の下押しは難しいかもしれないな’

「山下、俺の114円台のショート50本、買い戻してくれ。
期末前の10円抜きは無理だったな。

今日で利益を確定しておくことにする」

「80(104円80銭)です」

「了解、これで今期の俺のポジションは一切なくなった。

明日からお前は出発前の束の間休暇に入る。
これが、お前がニューヨークへ行く前の最後の仕事だな。

そろそろ昼か。
山下、昼飯、外でどうだ?」
ニューヨークのトレジャラーの入れ替えについて、話しておく必要があった。

「はい、良いですね」

「とりあえず、最後の昼飯になる。
和食にしておくか」

「高級和食ですか?」

「調子づくな」
と笑って返しながら、パレスホテル内にある会席料理‘和田倉’に電話を入れた。
運良く、個室が空いていた。

 

銀行の建物から出ると、二人は同時に深呼吸をした。

日比谷通りを走る無数の車から吐き出される排気ガスは気にはなるが、ビル内の空気よりもマシな感じがする。

一週間後の山下は、日比谷通りではなくパーク・アベニューを行き交う車の排気ガス混じりの空気を吸うことになる。

だが、ニューヨークの空は東京の空より断然青いのが良い。
その空の青さを思い出すと、ふとあっちへ戻りたくなった。

‘仮にそうできれば、山下も要らぬ苦労をしなくても済むのに’

パレスホテルは徒歩で5分ほどのところにある。

「これで当分、こっちの和食にもありつけないってことですね」

「そうだな、でも、あっちでも和食は食えるさ」
などと言っているうちに、ホテルに着いた。

‘和田倉’は6階にある。
通された部屋からは和田倉壕と和田倉橋を臨むことができる。
話が湿っぽい内容なので、眺望に救われそうだ。

「何でも良いぞ。
向こうでも和食は何でも食べられるが、まあこっちの方が旨いし、安い。
ここは高いけどな」
笑って言う。

「それじゃ、ビールと春の会席で良いでしょうか」

「ああ、そうだな。
そうしよう」

食事はニューヨーク生活の話が弾むうちに進んだ。

 

会食も終わり、デザートとコーヒーが運ばれてきた頃合いを捉えて、
「ところで山下、俺も先週末に東城さんから聞かされたばかりだが、お前に話しておかなければならないことがある・・・」と切り出した。

少し言い淀んでいると、
「何か拙いことでも?」
不安そうに聞いてきた。

「まあな。
実は山際さんの体調が悪いそうだ。
つまり、お前はそう長くは、山際さんと一緒に仕事をできない。

彼の下であれば、お前が安心して働けると思ってこの人事を進めたが、少し不安だ。

スイスの横尾さんが後を引き継ぐらしい。
日和出身の嶺常務と清水支店長とが進めている人事だ。
間違いなく決まる」

「横尾さんって優秀だそうですが、少し癖のある人だとか・・・」

「このところ彼は為替業務に携わってないし、俺も一緒に仕事をしたことがない。
だから、正直なところ、分からない。

だが、お前までもがそんな話を知っているほどだから、一応用心した方がいい」

「そうですか。でも、僕なら大丈夫ですよ、こんな性格ですから。

それに毎日、了さん、いえ課長とも話ができますしね」
と笑ってみせた。

「そうだな。
でも何かあったら、一人で抱え込まずに必ず俺に言えよ」
と返して、束の間の宴を閉めた。

‘ここでネガティヴなことを言って、ニューヨークでの仕事や生活に希望を抱いている山下を気落ちさせては拙い’

ホテルを出たところで、
「おい、お濠沿いを歩くか。
今年は桜の開花も早い。
これで当分、お前も日本の桜の見納めだ」

「そうですね。
和田倉の会食の締めが桜、最高ですね」

‘少し元気が出てきた様だ’

 

火曜日(27日)に行われた、森友文書改竄に絡む佐川元国税庁長官の国会証人喚問は大方の予想どおり、何の言質も得られないまま終えた。

それをメディアはこぞって「より深まった、行政への不信」などと伝えるが、当然のことだ。

似非資料を基に1年以上も国会が無駄な時間と税金を費やした。

反省の欠片もない政治家と官僚とのやりとりが行われている日本の状況を尻目に、世界情勢は時々刻々と変化していく。

北朝鮮問題では、中朝首脳会談、南北朝鮮首脳会談、米朝首脳会談と、矢継ぎ早に状勢が変化し、日本は完全に「蚊帳の外」に置かれた。

そんな状況下で迎えた翌日の水曜日、「北朝鮮の金正恩政権が日朝会談の開催を模索」とのヘッドラインがニューヨーク時間に飛び出た。

北朝鮮状勢が深刻化する度にリスク回避のドル売り円買いを進めてきた市場は、逆の動きに転じ、107円を覗いたのである。

その日以降、海外がイースター休暇に入り、市場は徐々に模様眺めの展開に落ち着いて行った。

日朝首脳会談の報で作られた俄かドルロング(円ショート)も次第に整理され、週末は106円25~30銭の気配で市場は終えた。

 

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山下健太郎さま

ここまで俺をサポートしてくれてありがとう。

本当に助かったよ。

残念ながら、これからはお前と俺には物理的な時差が生じることになる。

つまり、公私に亘ってこれまでの様な付き合いができなくなるってことだ。

だが、俺達は時差のない空間で生きている、そして夜討ち朝駆けも得意な人種だ。

だから、何かあれば、俺に何時でもコンタクトしてこい。

これは俺の命令だ。

お前独りで悩むことはない。

俺はお前の悩み、苦しみをすべて受け止めてやる。

東城さんが俺にしてくれている様に!

仙崎 了

追:沖田にはミッドタウン・トンネンル*に入る前に、マンハッタンの摩天楼を見渡せる場所で車を停める様に伝えてある。

その場所で、お前はきっと‘やってやる’という強い意志を抱くことになる。
間違いない。

そして仕事が苦しくなったら、そこに戻り、摩天楼を見上げろ。
きっと、‘やってやる’という気持ちが甦って来る。

その場所はそんな場所だ。
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和田倉での食事の後、濠の桜を眺めながら「機内で読め」と山下に渡した手紙である。

 

土曜の晩、いつものとおり、ラフロイグのボトルとグラスを持って、PCの置いてあるデスクへと向かった。

国際金融新聞への来週のドル円相場予測を書く為である。

だが、キーボードを叩く気にもならない。
山下のこの先のことが気に懸っているのだ。

山下は今日、羽田10時40分発のJL6便でこれからの主戦場となるニューヨークへと向かった。

見送りには行かなかった。
彼が「来なくていい」と固持したからだ。

銀行を離れれば、俺を「了さん」と馴れ馴れしく呼ぶ。
俺自身も弟みたいに接してきた。

涙を見せてしまうのが人情だろう。
見送りに来た家族に、それを見られたくない。

‘格好をつける柄でもないくせに’

頭を振りながら、グラスを一気に空けた。
ラフロイグ独特の薬くさい香りが口の中に残る。
でも、それが徐々に脳を覚醒させる。

偶然か、BGMにはYOSHIKO KISHINO の ‘Manhattan Daylight’ が流れ出した。

‘あいつもそろそろ、彼の地のデイライトを浴びる時刻だな’

 

木村様

来週から新しい期に入りますが、また宜しくお願い致します。

これで再び、私もトレーディングすることができる様になります。

2月末で収益を固めたため、3月はほとんどポジションなしの状態でした。

実際にポジションを持たないと、相場を見る目が曇り勝ちになります。

きっと来週以降は、もう少し気の利いた予測ができるかと思います。

目先の焦点は誰が積極的に107円台のドルを買うかでしょうか。

今週、107円台を覗きましたが、ドルショートの巻き戻しの結果とも言えます。

来週もまだ、下値圏での揉み合い程度と踏んでいます。
(リスク・ウェイトはまだ、下方に掛けていますが)

ところで、今週の財政金融委員会において、森友問題の渦中で喘ぐ麻生財務相は「過去数十年の歴史を見ると、(日米の長期)金利差が3%ならドル高円安に振れる」などと言ったらしいですね。

もちろん、財務省の誰かが作成した委員会用の資料に基づいての発言でしょう。

現時点で10年債の利回り格差は約2.7%ですから、このまま米金利が上昇すれば、現状の円高にも歯止めがかかると言いたかったのでしょうが、前提は金利上昇に米経済と米株式市場が耐えられるかどうかです。

また米金利上昇の持続性にも限界があるでしょう。

確かに、短期的には米金利上昇はドル買いのインセンティヴになるのは事実ですが、金利平価説を考慮すれば、金利差拡大は先のドル安円高の示唆でもあります。

まあ、麻生さんにそんな話をしても理解されないでしょうが。
未曾有も読めなかった方ですからね。

 

来週の予測レンジ:104円50銭~108円

IBT国際金融市場本部外国為替課長 仙崎了

 

(つづく)

注:
*ミッドタウン・トンネル
JFK(ケネディー空港)はクイーンズ地区の最南端にある。

ミッドタウン・トンネルはクイーンズ地区とマンハッタン島の中心部をつなぐ重要な役割を果たしている。

 

この連載は新イーグルフライから抜粋したものです。